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4話
冬四郎は、深々と警備員に頭を下げ礼を言うと車の方に向かっていった。祐斗だけは、名残惜しいように何度となく振り向いていたが、他に出来る事もなく大人しく車に乗った。
運転席に座った颯介は、エンジンをかけた。そして大学を後にした。
「帰るんですか?」
後部座席から身を乗り出して、祐斗が抗議の声を上げるが冬四郎も颯介も取りつく島もないない。
しばらく車を走らせ、大学が完全に見えなくなると、颯介は車を停めた。そして、後ろを向くと
「帰らないよ、管狐を置いてきてる」
と言い、ちらっと冬四郎を見た。冬四郎は、前を向いたまま黙っていた。
「管狐を?」
「そう。宮前さんの提案でね、管狐に少し探りに行かせてるから帰ってくるまで待つよ」
「そうなんですか?」