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4話
少しばかり血のついた口元を舐め、管狐は音もなく床に飛び降りた。そして、鼻を動かしながら、階段を降りて行きすぐに見えなくなった。
「大丈夫ですか?」
手をさする冬四郎に、人の悪いような笑みを浮かべたまま颯介が言った。
「噛まれた程度で済んで良かったですよ。こんな所で死なれたら、むっちゃんに何を言われるか」
「地味な嫌がらせですか?」
冬四郎は舌打ちをして、颯介を睨んだが、素知らぬ顔をされてしまった。
戻ってきた警備員と祐斗が、しかめっ面の冬四郎とにやにやする颯介を遠目に見ながら、階段を降り始めた。
そして、順に泊まり込みをする研究室の教授達に声をかけて行った。泊まり込みをする教授は、そんなに多くないからかすぐに話も終えた。