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4話
颯介は優しく管狐を撫でながら、目を細めて冬四郎を見返した。その目は、物騒な光をたたえている。
「むつが無事に戻ってくるなら」
冬四郎のはっきりとした返事に、颯介は笑みを浮かべながら頷いた。
「望んだとしても居場所が分からないんじゃ難しいかもしれませんが…やってみましょうか。他に手もないですし」
警備員と祐斗に背を向け、颯介は管狐を襟元から取り出した。長い尻尾を颯介の腕に絡ませつつ、管狐はひくひくと鼻を動かした。
「お願いします」
冬四郎が、そうっと管狐を撫でようとすると、小さく尖った歯をたてて、冬四郎に噛み付いた。
「いっ‼…っつー」
「あ、もぅ俺がむっちゃんを望んでるんですから…そりゃ噛み付きもしますよ」
肩を震わせて颯介が笑った。
「なるほど…俺は邪魔者って事なんですね。それにしても痛かった」