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4話
警備員は、からからと笑いながら、ドアをノックした。そして、残っている教授にそろそろ帰宅するよう促す。
祐斗も講義を取っている教授が居るのか、佳澄とむつの事を聞いていた。だが、研究室にこもっている教授は何も知らなかった。それでも噂を知っているからか心配はしてくれているようだ。
廊下を歩きながら明かりが漏れていても、声をかけない研究室もある事に冬四郎が気付いた。
「声をかけない部屋もあるんですか?」
「えぇ、泊まり込みでって方は朝のうちに言ってくれてますからね」
熱心なのだろう、と警備員は苦笑した。
「あの、泊まり込みの教授方にも行方不明の子が居る事を話しても構いませんか?」
冬四郎の申し出に、警備員は困ったように首を傾げた。
「耳栓なんかをしてる方も居ますので、全員に声をかける事は出来ないかもしれませんが…それで良ければ」