62/121
3話
「そうですか、むつの事になれば尚更って感じなんでしょうかね?」
むつの名前が出た途端に冬四郎は、眉間に皺を寄せて颯介を睨むようにみた。
「ご自分で行動しないから社長の口車に乗せられて、不仲に近付いてるような気もしますが」
「今、その話は関係ないんじゃないですか?そもそも、むつをどうこうしたいなんて思ってませんよ」
颯介の目の下がピクッと痙攣するように動いた。冬四郎はポーカーフェイスを装ってるようで、声はかなり低い。
「湯野さんは何が言いたいんですか?」
「いえいえ、そんな。ただ、むつの事をどう思ってるのかなって思いましてね」
流石の冬四郎もすぐには、答えなかった。じっと颯介を見た後、顎に指を添えるようにして悩んだ。
「考えた事もなかったですね…」
「はい?」
「いや、年の差があるんで幼馴染みみたいな、妹みたいな感じだったので…しばらく会わないうちに大人になってて、そう、接し方が分からないってのも本音ですかね。昔のむつとは違うようで、何も変わらないのか…」
冬四郎の言ってる事はおそらく本当の本音なのだろう。颯介はそう思った。




