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3話
「たぶん?」
「俺が気付けなかっただけ、ってのもあるかなって思って」
「そうだな、毎日通ってるからって全てが分かるわけじゃないもんな」
颯介は、そう言うとコーヒーを飲んだ。座席を後ろに下げ、足を組んでゆったりしているようでも、その手には携帯が握られていた。連絡があればすぐに気付けるようにだろう。
颯介は颯介で、焦りを感じている様子に祐斗は何だか安心を覚えた。
「そうです、よね…毎日のように顔を合わせてた寺井の事も全然分かってなかったですし」
「相談されなかったのが気になる?」
「気になるってか…きっと何にもしてやれなかったと思いますけど」
「祐ちゃんといい、むっちゃんといい…人が良いよな」