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3話
自動販売機で買った茶を飲みながら、祐斗は車の中から身を乗り出すように敷地内から出ていく人達を見ていた。怪しそうな人は居ないし、勿論、むつや佳澄が出てくる事もない。
「祐ちゃんガン見しすぎ」
「だって…ちゃんと見てないと」
颯介は、あまりしっかりと見ている様子はなく、コーヒーを飲んでいる。
「なぁ、気になってたんだけど…むっちゃんは妙な気配があるとかって言ってなかったのか?」
「言ってました。けど、学校ですよ?色々、視えるし、感じるんですけど気になるモノなかったんですよね」
祐斗の視線が、颯介に向く。颯介は見ていないようで、話をしながらもしっかりと視線だけは出てくる人達を見ていた。
祐斗もそれに見習うように、前を向く。
「学祭が始まってから今までと違う気配みたいなのは?」
「全然ないですよ…たぶん」