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3話
「宮前さんに譲るべきじゃなかったな」
颯介が、心底がっかりした様に言うので祐斗はくすっと笑ってしまった。
「本当それですよ、勿体ない…で、社長からの連絡は?」
「あったよ。宮前さんが直接来るってさ、リストも膨大らしいから」
祐斗は、くっきりと眉間に皺を寄せた。
「ってより、むつさんが心配なんじゃないんですか?」
「まぁそうだろうね。結局、昨日の事で不仲に1歩近付いたみたいだからな」
颯介と祐斗は並んで歩きながら、開いている部屋を確認していく。
「あっ‼そうだ‼…やっぱり、むつさんも巻き込まれてるんですって‼」
祐斗の大きな声が、静かな廊下に響き渡っていた。
「どういう事?昨日、むつさんが変な視線を感じるって行ってたんですよ…けど、俺らはその…邪な男の視線だと思って、大して気にしなかったんです」