53/121
3話
「わりぃな、それは分かんねぇや。俺が見たのは下でタバコ吸ってる時に、階段を上がってくとこだけでさ」
「迷子なら携帯にかけてみれば?」
「掛けたんですけど、出ないんですよ」
祐斗が本当に困ってると分かったのか、先輩達は見かけたら引き留めて連絡してやると約束してくれた。
「ただの迷子だといいけどな」
「どういう意味ですか?」
「だってさ、噂あるじゃん?学祭で消える女の子の噂」
「あーでもアレって学生限定なんじゃねぇの?」
「そうなのか?」
どうやら噂は、多くの学生に知られているようだった。
「だってほら、学祭だし?」
「………」
「おい‼谷代はその先輩の事心配してんだろ、余計な事言うなよ。研究発表に気をとられて携帯にも気付かないんだろ」
他の先輩のフォローも虚しく、祐斗はうなだれた様子だった。