2話
「人に頼らず、先ずは自分で判断しな。それと、わたしじゃなくて警察に言いな」
『分かりました…すみません』
電話は切れた。
むつは、携帯をデスクに戻すと耳を像のようにしていた颯介と社長に聞こえるように、溜め息を吐いた。
そして、再びパソコンの方に視線を戻すと静かにキーボードを叩き始めた。
だが、あまり集中出来ていないようで、何度となくバックキーを叩く音がする。それも、だんだんと強くなる。
「あぁ…もぅっ‼」
バンッとデスクを叩き、むつは立った。管狐が、そそくさと颯介の肩の上に戻っていった。
「ちょっと出てくる」
歩きながら髪を一つに縛ると、ロッカーから鞄と上着を取り出した。
「何処に?」
「祐ちゃんとこ」
「何かあったの?」
むつは、ちらっと窓に目を向けた。曇っては居たが、今日も雨は大丈夫そうな気がした。
「何か有りそう」
「仕事になりそうなのか?」
ずっと静かにしていた社長が、楽しそうににやにやしている。
「請求書は谷代でつけといて」
「分かった。そーちゃん、俺の車使っていいよ、その方が早い」
投げられたキーケースを颯介は受け取り、むつと出ていった。
残った社長は、にやりと人の悪いような笑みを浮かべているだけだった。