2話
学園祭に行った次の日、今日もむつは不機嫌そうだった。何となく察しのつく颯介は、こっそり謝ったりしたが効果なしのようだ。社長は今日も事務所に居たが、静かにしていた。
キーボードを叩く音だけが、静かすぎる事務所内に響いていた。管狐だけは、何も気にすることなくむつの肩の上で小さな目をしょぼしょぼさせていた。
ぶーっぶーっ、とマナーモードにしていた携帯が震えた。その音がやけに大きく聞こえ、颯介と社長がビクッと肩を震わせた。
「はい?」
『むつさん‼今から来れますか?』
電話は祐斗からだった。
「何でよ?」
颯介と社長は、電話の相手が誰なのか分からないが気になるようで、耳に神経を集中させていた。
『寺井が行方不明なんです‼…昨日ステージの手伝いに行ってから誰も見てないって、帰宅もしなかったみたいで』
「はー?若いんだから、飲んでて帰らなかったとかじゃないの?」
『そんな子じゃない‼』
祐斗の大声にむつは、少しだけ耳から携帯を遠ざけた。
『むつさん昨日変な視線がって言ってましたよね?人間のじゃないって。もしかしたら…』
「あんたねぇ。それなら、祐ちゃんこそ気付くでしょ?」
祐斗は、黙ってしまった。