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2話
むつの周りを気にしてか、小さな声に祐斗は少しばかり身を乗り出した。
「居るって…霊的な?まぁ学校なんで多く居ますけど。特に悪い感じは」
「ホント?わたしの周りは?」
「いえ、特には。どうしたんですか?」
「イヤな感じがする。研究発表してた部屋と同じ感じ…あの紫陽花」
むつは、飾られている紫陽花を見た。研究発表の部屋にもあった赤味の強い紫陽花と同じに見えた。
「紫陽花?まぁ確かに赤が強いけど、どこにでもあるだろこの時期」
冬四郎にそう言われ、むつは頷いた。むつは、ぎゅっと目を瞑った後、ゆっくり開いて冬四郎の服の裾を引っ張った。
「ここには居たくない」
祐斗も冬四郎もむつの意外にも弱々しい言い方に驚いたようだったが、すぐに腰を上げた。