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2話
そして、寒いのかむつは無意識のうちに何度も腕をさすっていた。何故だか鳥肌がひかない。
「むつさん寒いんですか?」
「………」
祐斗の言葉も聞こえてないのか、むつはボーッとしているようだ。
「むつ?」
「寒いってより…何だろ」
祐斗の声が聞こえたのか、真壁自らが、暖かい紅茶を持ってきた。
「冷房で冷えたのかもしれませんね。生姜入りなんで温まりますよ、どうぞ」
「あ、すみません…頂きます」
むつは、ティーカップを両手で持つとふぅふぅ冷ましながら飲んだ。それでも鳥肌は引かず、何とも言えない嫌な気がしていた。誰かにじっと見られているような、何が側に居るようなそんな感じだ。
「あ、そろそろあたし行かなきゃだ」
佳澄は、立ち上がるとむつ達にぺこっと頭を下げると、グラスを片付けて出ていってしまった。
「次、寺井ステージ手伝いなんですよ」
「そう…ねぇ祐ちゃん。やっぱり、ここ何か居るでしょ?視えない?」