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2話
常に持ち歩いてるのか、冬四郎は名刺を取り出して佳澄に渡した。
「調べ直す事って出来ないんですか?」
「現状では出来ないでしょうね。事件だとしても証拠もないわけですし」
祐斗の持ってきたレモンティーに、佳澄はゆっくりと口をつけた。
「そうですか」
「けど、何もしない訳じゃないですよ。情報の呼び掛けもするし、わたし達はここに写ってる方々の顔も覚えてたりするわけですし」
佳澄の悲しそうな声に冬四郎は、慌てて弁解するように言っていた。
むつと祐斗は、会話に割り込むわけにもいかないので、黙っているのみ。祐斗は何度か口を開きかけたが、むつが首を振っていた。仕事として出来る事はない、そういう事だろう。