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2話
「けど、連れ出すっても女の子だけど大人だからなぁ。デカいキャリーバッグとかにつめて運んだにしてもそんな風な人も映ってなかったしな」
「バラして運ぶとか?」
むつがぼそっと呟いた。
「可能性としても方法としても有り得る事だな」
「なら、先輩はもう死んでるって事なんですか?」
「生き死の証拠も…ん?」
むつでも祐斗でもない声に冬四郎が、ふと顔を上げた。佳澄が泣きそうな顔をしてテーブルの上のチラシの写真をじっと見つめていた。
「寺井さんのお知り合いなんですか?」
祐斗に飲み物を取りに行くよう視線を送り、むつは席を譲って座るようにすすめた。佳澄は、会釈をすると座った。
「近所のお姉ちゃんなんです」
「そうだったの。ごめんなさいね、気分の悪い話が聞こえちゃったでしょ」
気遣わしげなむつの言葉に佳澄は、ゆるゆると頭を振った。
「あの…警察の方なんですか?」
「わたしは県警の刑事です。今日は非番なんですがね」