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2話
祐斗の言った通り、出てきたアイスティーもアップルパイもアイスコーヒーも下手な喫茶店よりも美味しかった。
食堂の中は涼しいし人もそこまで多くはなく、むつも冬四郎もゆっくりと出来た。祐斗もする事がないのか、ウーロン茶を持って来て一緒に座っていた。
「あ、そー言えばさ。寺井さんに会ったけど…何のビラ配りしてたの?」
「あぁ。家出人のやつですね」
見もせずに半分に折り畳んでしまっていたチラシを取り出して広げた。
「6人も?」
「うちの学生以外の写真も載せてあるんですよ」
白黒の写真の下には学校名と氏名、不明時の年齢と服装なんかが書かれていた。
「この子…」
冬四郎が一人の女の子の写真を指差しながら、しばらく見つめていた。
「確か、事件性ありで捜査に発展したんじゃなかったかな?」
「そうなんですか?うちの学校の生徒らしいんですけど…俺が入学する前の事なんで分からないですけど」
冬四郎は6人の顔写真の載ったチラシを険しい表情で見つめていた。