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2話
研究発表の部屋から出て、気分を変えようと祐斗は、軽音部のやっている喫茶店に誘った。二つある食堂のうち小さい方を使ってやっていると言うので、ゆっくり座って休めそうだ。
「わーふつーだ」
むつの感想の通り普通の食堂で、20人も入れるかどうかの広さだった。少しばかり軽音部らしいというか、アンプやギター、ロックバンドのポスターが貼られている程度だった。
「こっちまで手回らなくて。…で、何飲みます?飲食系は、わりと力入れてやってますんで、大丈夫です」
祐斗は、言い訳のようにそう言うとメニューを差し出した。
「わたしアイスティーとアップルパイ」
「じゃあ俺はアイスコーヒーで」
「わかりました」
メニューを下げ、祐斗はキッチンに入っていく。その後ろ姿をむつは、にこにこと見送っていた。
「楽しそうだな」
「ん?うん。何か良いなーって」