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2話
学生の音楽活動としては、なかなか良かったんじゃないかと思う。祐斗が意外にも歌が上手い事も、そこそこモテるっぽい事も分かった。
むつと冬四郎は、そんな祐斗の姿を遠目から眺めていた。
「意外だ」
「誰にでも取り柄があるって事ね」
祐斗が客席の方に目を向け、むつと冬四郎を見付けると照れたように笑い手を振ってきた。むつも軽く手を上げた。
ステージが終わった祐斗は、バンドメンバーから離れ、むつたちの所に来た。そして、むつの私服をじろじろと眺めた。
「今日、どーしたんすか?化粧もばっちりだしスカートだし」
パンフレットでパシンと頭を叩かれた祐斗は、それでも嬉しそうだった。
「ま、そんな事より…本当に来てくれたんですね。って湯野さんは?」
いささか、ぎこちない言い方になったかなと思ったが、むつは気にした様子もなく首を振るだけだった。
「まぁ…とりあえず、どうします?他、見て回ったりとか、案内くらいだったらしますけど」
「そーねぇ。じゃ、お願いしようかな」
むつにそう言われ、祐斗は嬉しそうに返事をした。