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2話
祐斗の通う大学が見えてくると、道端でチラシを配っているグループがちらほらと視界に入ってきた。
「ご協力、よろしくお願いしまーす」
女の子たちが声を揃えて言いながら、通行人にチラシを渡していく。むつも何気なくそれを受け取った。
「ご協力よろしくお願いしま…」
最後まで言わずに、むつの顔をじろじろ見る女の子。むつにも見覚えがあった。
「あら、寺井さん?」
「あっ‼谷代君の…。学祭みに来たんですか?」
「えぇ。谷代が折角パンフも持って来てくれましたからね」
佳澄は少し嫌そうな顔をしていた。
「むつの知り合いか?」
「んー?うちの谷代の彼女さんだよ。それじゃ、わたしたちは失礼しますね」
冬四郎を連れてむつは、佳澄に背を向けてさっさと歩き出した。女同士の不穏な雰囲気にも気付かず、冬四郎は谷代君に彼女が出来たのかーと呟いていた。