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2話
冬四郎は、携帯をポケットにしまおうとして、傷付いたような泣きそうな顔をしているむつに気付いた。
「なぁ…俺じゃ代役にならないだろうけどさ、出掛ける予定だったんだろ?嫌じゃなかったら、付き合おうか?」
「んー良いの?」
「俺も約束無くなったしな」
「祐ちゃんに学祭見に来ないかって言われてて、それだけど良いの?」
「学祭かぁ。懐かしいな響きだな…折角だし行こうか」
こくり、と頷いたむつは、泣きそうな顔からすぐに笑顔を見せていた。冬四郎は少し安心していた。
「で、場所は?」
「えーっとねぇ…あっち?」
パンフレットを広げて略式の地図を見ながら、むつが大雑把に方向を示す。
「うん、逆だな」
冬四郎が立ち上がり先に歩き出すのを見て、むつもおいてかれないようにと慌ててついていく。