2話
冬四郎にまじまじと見られ、むつは恥ずかしそうに目をふせた。
「そ、そんな事より。何してんの?」
「あぁ、山上さんに呼び出されたんだ」
隣に座ってきた冬四郎は、襟元を開けパタパタとあおいで風を送っている。じっとりと汗をかく、そんな陽気だ。
「で、むつは何?友達と待ち合わせ?」
「ううん、颯さん待ってるの」
途端に目を細め、険しい表情を作った冬四郎が再び、むつを無遠慮に上から下まで何度も見た。
「え?何?もしかして、変?」
「上着ないのか?ちょっと肌が見えすぎじゃないか?」
急に年頃の娘を持つ父親のようになった冬四郎に、むつは目を大きく開けて驚いていた。たが、大人しく着たりはしなかった。暑いからだ。
「はぁーったく…山上さん遅い」
「ふーん、連絡してみれば?」
冬四郎が電話を掛け始めたのをみて、むつも鞄から携帯を取りだし、颯介からの連絡がないかを確認した。
「あっ、山上さん遅いじゃないですか‼今、何処…へ?むつ?隣に居ますけど……はっ?…むつ、代われって」
「えー?何よ。…もしもーし?何?……はぁ?何それ‼…あ?あーはいはい」
むつが不機嫌そうに、携帯を冬四郎の耳に押しつけた。
「どうしたんですか?」
『むつにも言ったけど、俺と湯野は急な仕事でさ、悪いけど行けないから。後は適当に、頼むよ』
「え‼ちょっ…切られた」