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1話
「いつだっけ?」
予想だにしなかった問いに祐斗は慌てた。パソコンの画面を見つめたままのむつの表情は、祐斗からは見えない。
「来週の土日です」
「祐ちゃん、何かやんの?」
「え?俺っすか?俺はサークルで喫茶店をやりますけど」
そう言うと、むつはようやく顔を上げた。ホワイトボードを見ているようだ。
「ん、まぁのぞきに行くくらいなら」
「え!まじで?」
「何よ?特に予定ないからね」
祐斗が愕然とした表情をしてるのにも気付かずむつは、さっさと視線をパソコンに戻した。そして、暢気にも何着てこうかなーなどと呟いている。
「これ、一応パンフです」
「ありがと。楽しみにしてるね」
パンフレットを手に取り眺めながら笑顔でむつにそう言われてしまうと、祐斗も罪悪感でいっぱいだった。
今からでも事の真相をと思った祐斗だったが、結局は口を開いただけで、何も言えなかった。