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1話
次の日、むつは不機嫌そうに黙々と仕事をしていた。電話や来客があれば、にこやかにそつなく対応しているが、事務処理をしている時には、時折キーボードを叩く音が大きくなったりして、苛ついてる様子が分かる。
今日も珍しい事に社長が事務所に居て、こっちは気分が悪そうにしている。
颯介は、何があったのか推測する事も出来ずにこっそりとそんな二人を観察していた。
定時になるとむつは、さっさと帰った。
今日はろくに会話もなく、重苦しい雰囲気だった。颯介は何も言わずに、じっと社長を見ていた。それに気付いてる社長は、のっそりと顔をあげた。
「何にもしてねぇよ。みやと引き合わせようとしただけ」
「進展なしですか?」
「むつが察して逃げたからな。こうなったら意地でもあの二人をデートさせるぞ‼手伝えよ」
颯介もは予知能力はない。だが、よくわからないが面倒くさい事が起きそうな予感に、そそくさと帰る支度を始めていたが時すでに遅し、だ。
「祐斗も呼ぶぞ‼あいつだけ春が来るなんて許せん‼」
「祐ちゃんに春ですか?」
颯介の言葉を無視して社長は、祐斗の携帯に電話をして早速呼び出していた。