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1話
「この前の仕事以来、会ってないんだろ?もう…5ヶ月?」
やや前のめりな社長に合わせるように、むつが少しだけ背中を反らすようにして距離を取っている。
「まぁ…そうだけど。けど、今の流れで何でしろーちゃんが出てくるの?」
「好きだろ?」
むつは、黙ってしまった。耳がほんのり赤くなっているのは、酒のせいでは無い事を社長は知っている。
「連絡してやれよ、この前みやと飲んだ時にむつは元気ですかーとか聞いてきたんだぞ、あいつ」
「用事がないもん」
「飯とか飲みにとかさぁ」
下唇を噛むようにしてむつが、少しばかりうつむいた。冬四郎の話になると、むつは静かになってしまう。
「明日、あいつ休みなんだし連絡したらすぐに来るんじゃね?」
「?何でそんな事知ってんのさ」
「ホントは今日、あいつと飲む約束してたんだわ。で、今むつと飲んでる事もメールしといた」
「先にそれを言ってくれたら、誘わなかったのに」