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5話
むつは、目を大きく開いてパチパチさせると、聞き取れるか否かくらいの声で、すみませんと言った。
「あ、私も聞きたい事がある…ねぇ颯さんと喧嘩でもしたの?」
「は?何で?」
「だって管狐に噛まれたりしてたし…颯さんが、わざと仕向けてたとは思いにくいなぁーって思って」
冬四郎は苦笑いのような困ったような顔をして、むつの方を向いた。今になって本当の事を話すのは恥ずかしい。冬四郎は、そのまま微妙な笑顔を浮かべてスルーをする事にした。
「何よぉ‼そんくらい教えてよ変なの」
さっきまでの落ち込んでいる様子はなく、くすくすと笑っている。それを見て冬四郎は、安心したようにハンドルを握る手からも力を抜いた。




