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5話
むつは、こくりと頷いた。
「確か…水分を出して血を濃くする為とかって言ってたかな」
「で、他には何かされたとか、聞いたとかは無いのか?」
しばらく、うーんと声に出して唸っていたが思い出せる事はなかったようだ。
「祐斗に抱き起こされるくらいまでの事って朦朧としてて全然…まぁ朝起きるまでの記憶がほとんど途切れ途切れな感じなんだよね…ごめんね、役立たずで」
うつ向いてしまったむつが、手を組んでぎゅっと握っているのに冬四郎は気付いた。その手首には、縛られていた痕とほどこうとして出来たのか、赤く所々、皮のめくれている所があった。
「今回はホント…役立たずだ」
拗ねたような言い方で、語尾が貸すかに震えていた。




