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5話
信号で停まり冬四郎は自分の膝の上に落ちた、むつの髪の毛をいじる。お湯ですすいだだけのせいか、少しだけパサついている気がした。
「真壁の所に行ってからの話、聞かせてくれるか?」
窓に寄りかかっていたむつは、ゆっくり起き上がると身体の向きを冬四郎の方に向けて、背もたれに寄りかかった。
「行ってから、コーヒーを出されて。未開封のだったから口をつけたんだよね…その後、気付いたら縛られてて。隣には意識のない寺井さんが居た」
むつは、そこまで話すとちらっと冬四郎は方を見た。冬四郎は、頷きながらも前を向いている。
「何かされたりは?」
「暖房付けられてた。窓もドアも締め切った部屋で」
「それで脱水症状だったのか」




