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5話
冬四郎は、むつの鞄や泥だらけの服を入れた紙袋を持つと先を歩いていく。ベルトがなく、ジーパンがずるずると下がってしまうむつは、下がらないように両手で掴みながら歩いている。
「その歩き方、面白いな」
ドアを開けてくれた冬四郎を睨むも大人しく助手席に座った。ドアも閉めてくれたし荷物は後部座席に置いてくれた。
「これ、しろーちゃんの?私の服は?」
エンジンをかけ、車を走らせた。
「合鍵もないのにお前の部屋に入れるわけないだろうが」
「それもそうね…ってか、しろーちゃん忙しいんじゃないの?」
「まぁな…」
始末書とかでな、と小声で付け足したがむつには聞こえなかったようだ。
少しだけ窓を開けてやると、わずかに入ってくる風にむつの髪の毛が運転席まで流されてきた。
「今も仕事で来てるんだよ。話を聞きたいからな、ついでに送ってやろうと思ってな」




