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5話
医師の診察も終わり、着替えようと紙袋をのぞくと冬四郎の物とおぼしき男物の服が入っていた。
むつは、しばらく考えた。そして、辺りを見回してみたが、この病室内には自分の鞄しかない事に気付いた。鞄の中を見てみたが、携帯も見当たらない。
仕方なくサイズの大きなTシャツを着ようとして、下着も何も身に付けてない事を知った。紙袋をベッドの上で引っくり返すと、パンツだけはあった。コンビニで買ってきたのだろう。
それの、ごわごわのパンツを身に付けて、上をどうするかと悩んでいるとドアがノックされ返事も待たずに入ってきた者が居た。
「あっ‼」
「しろーちゃんっ‼」
ドアの方に背中を向けていたむつは、首だけを動かして入室してきた冬四郎を睨んだ。
「ごめんっ‼着替え…てたんだな」
冬四郎が慌てて背を向けるのを確認してから、むつはTシャツを手に取った。
「ねぇブラとかは?」
「サイズ分かんない…から、ない。退院手続きしてきたから、このまんま家に送るから我慢しろ」
「はーい」




