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5話
むつが目を覚ました時には、すでにカーテンからは光がさしていた。点滴はとっくの昔に終わっていたのだろう、腕はしっかり布団の中に入れられていた。
それでもまだ、ぼんやりとしている。昨日、誰かが来たような気もしたがそれさえも夢だったのかもしれない。そんな風に考えていると、ドアがノックされ看護師が入ってきた。
「おはようございます、よく眠れましたか?気分が悪いとかもありませんか?」
「おはようございます。凄くよく寝れましたし、もう大丈夫です」
「なら良かった。朝御飯持ってきましたので、それを食べたら先生の診察を受けてくださいね。以上が無ければ帰れますよ…それと、これ着替えです。宮前さんって方が昨日遅くに持ってきたんですよ」
看護師は紙袋を渡すとすぐに出ていった。そして、トレーに乗せられた朝食をむつの前に置いていった。
よく考えたら1日近く、飲まず食わずだったのだ。空腹を思い出したむつは、粥をゆっくり口に運んだ。味は薄いが米の甘みが、とても美味しく感じられた。




