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1話
男の子にしては少し背が低く童顔の大学生、谷代祐斗が驚いたようにむつと社長を交互に見ている。意外な組み合わせのようだ。
むつと社長からしたら、祐斗が女の子と二人で歩いてる方が余程、意外だった。
「もしかして…彼女?」
慌てて否定する祐斗を尻目に、ショートカットの女の子は、少し気が強そうな目をむつに向けていた。
「違いますって!大学でサークルが同じの、寺井佳澄さん。で、寺井。この二人はバイト先の先輩とその社長」
「寺井です…」
「初めまして、わたしは玉奥です。こちらが社長の山上です、よろしくね」
むつが他所行きの声で簡単に自己紹介を済ませた。
「珍しい組み合わせですね…飲んでたんですか?」
佳澄は、さっさとその場から離れたそうにしているが、祐斗は嬉しそうな顔をしてむつに話しかけ始めていた。
むつは、そんな佳澄に気付いていた。
「そ、これから次に行くところだから…じゃあまたね」
社長の腕を引っ張って、そそくさと去っていくむつを祐斗が、残念そうに見送っていた。