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4話
むつは、あぐらをかくように座り直し立ち上がった。だが、急に立ったせいかふらついた。倒れそうになったむつを冬四郎の腕が受け止めた。
「大丈夫なのか?」
「ん、何となく…これ切れる?」
硬く結ばれている紐を冬四郎がほどこうとするが、濡れてもいるせいか、なかなかほどく事が出来ない。
冬四郎が格闘していると管狐が、するっとのぼってきて細く小さな歯で紐に噛みついた。そして、噛みきってくれた。
「わっ、ありがとう」
両手が自由になったむつは、管狐の小さな頭をかくように撫でた。
撫でられて満足したのか、颯介の所に戻ろうとして、ついでのように冬四郎に噛みついていった。
「いって‼何でだよ」
「珍しい…噛むなんて…管狐と喧嘩でもしたの?」




