106/121
4話
むつの少し低い声が耳に心地よかった。祐斗は、空いている手で涙を拭うと女性達を紫陽花の方を見た。
真壁の首から手が、ゆっくりと1本ずつ離れていく。女の子は、着物をぎゅっと握り締めて、うつ向いていた。真壁は気を失っているのか、泥の中に倒れた。
その様子を見ていた冬四郎が、我に返ったように真壁に近寄ると首に指をあて脈がある事を確認していた。
「むつさん、俺っ…俺があいつを」
「違うよ。…あの子が」
むつが動かしずらそうに首を紫陽花の方に向けた。女の子は、着物を握りしめたまま、顔を上げようともしない。
祐斗は、むつを起こし座らせた。
「あの子が、祐斗の力を借りたんだ…まだ怒ってるよね?」
女の子は、顔を上げた。大きな瞳には涙が溢れそうなくらい溜まっている。
「あの子が?…紫陽花を汚したから?」




