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4話
「祐ちゃんっ‼」
颯介の慌てたような、声に祐斗は振り向いた。祐斗の顔を見た颯介と冬四郎は、ぎょっとなり何も言えなかった。
祐斗の瞳は猫の目のように、黒目が細くなっていた。暗く土砂降りで視界が悪いにも関わらず、はっきりと分かる。
「寺井とむつさんを返せ」
祐斗の異様な瞳に驚いているのか、真壁が持っていた鉈が佳澄の首もとから離れていた。
冬四郎と颯介は走り込んで、真壁を突飛ばし佳澄から離した。颯介が佳澄を抱き抱え、逃げようとしたのを確認しむつの所に行こうとしたが遅かった。
すぐに体勢を整えた真壁が、むつの首に刃を押し当てている。少しでも動かされたら、深く切れそうだった。