俺、真の愛を知る
俺は、俺の中で覚醒したもう一人の俺と協力してディアマンドラアスの討伐に成功した。
その代償に俺は命の全てを失い、俺の意識は途絶えた。
俺は第三者の視点で『白龍神殿』の『奥の殿』を見ていた
遠くから、大騒ぎする声が聞こえる。
一人の小柄な男がボロボロの体で両手には血が滴るダガーを持ち、足を引き摺りながら、白龍の白い白骨の前に立っていた。
何故か彼の気持ちが俺の意識の中に流れ込んでいた、
深い悲しみと絶望感、苦悩、ありとあらゆる感情が津波の如く流れ込んで来た。
彼は決して幸せでなかった。
失う者が多すぎた。
彼は決して喋らない白龍の化石の前で、一人喋る。
『白龍、アンタの理想は立派だ、同族殺しは認めない、凄いねぇ、でっ、其を犯した奴は化け物にする!ローグ、バンデッド、スカーレット!』
男は拳を握り締めて、白龍に向かって怒鳴った!
『其でアンタは満足か!!白龍!!!』
『昨日迄、友だった者に命を狙われる地獄を見せて、アンタは満足か!!白龍!!!』
どんなに男が怒鳴ろうと、白龍は決して答えなかった。
軈て、男は静かに悲しみを堪えるように語りだした、『世界には殺さなけりゃ為らねえ奴がごまんといるんだよ!分かるか白龍!!』
『自分は手を汚さず汚ない仕事を他人にやらせるクソみたいな奴が沢山いるんだ!白龍!』
『其が世の中なんだ!白龍!!』
其でも白龍は答えなかった。
『俺は罪を認めよう、俺は同族を殺した!!』
彼は自分の胸にダガーを当て、『俺は逃げるのに疲れた。』
グサッ!!!
自らダガーを、心臓深く射し込み、
『俺はこれ以上、同族を殺すのに疲れた。』
ドバッ!!!
ダガーで自分の心臓を抉り出しながら、
『へっ、流石、化け物だな、心臓が無くても生きてやがる。』
彼はその心臓を白龍に投げつけながら、
『お前に俺の心臓をくれてやる!だから頼む!!俺を死なせてくれ!!!』
其処で男の意識が途絶え、
俺は夢から覚めた。
俺は夢から覚めた、そして廻りにマリーが、メリーが、エリーが座って泣いていた。
ラストニアに降る雪も止み、暖かな風が南から吹き始め、雲海の切れ目より日射しが射し始めた。
俺は立ち上がる事が出来なかった、体はゆっくりと黒い塵になりかけていた。
あぁ、俺はやっぱり化け物だったんだ、御免なマリー、メリー、エリー、君達を騙していて、
「貴方は、レイ!私達の御主人様です!!」、溢れる涙を拭わずマリーが、
「そうだよ、レイ、貴方は私達の旦那様だ!!」、涙が流れる瞳を固く閉じて、両手を握り締めてメリーが、
「そうです、レイ、貴方は立派な冒険者であり、私達のマスターです!!」、泣きながら回復魔法をかけ続けているエリーが、
俺を許してくれると言っていた。
有難う、マリー、メリー、エリー、最期に皆を泣かしちゃったね、本当に御免な。
オセロが、我が友が俺の廻りに集まり、普段は陽気でふざけてばかりいる連中も今は大人しい。
おぃ、おぃ、可笑しいだろ、そんな真面目なのはD&DONのユーザじゃねえだろ、何の為のネコの被り物なんだよ!
笑って騒いでくれよ、悲しいじゃねぇか。
何時の間にか万を越す我が友が俺の廻り集まって来てくれた、
そして一人が右手の武器を天に翳した時、
次々と手に持つ武器を天に翳し、やがて俺を中心に大輪の花が咲くように、
全ての我が友達が武器を天に翳してくれた。
あぁ、言葉は要らない、言葉が無くても通じる気持ちがある。
最期にその動作だけで充分だ。
皆の気持ちは受け取った、有難う、我が友、マイフレンド。
彼等はゆっくりと光輝き天に消えて行く。
また一人、また一人と。
『素晴らしい仲間だな。』
あぁ、素晴らしい仲間だ、
『・・・お前には愛する人と愛する仲間がいる、やっぱりお前は生きろ、逝くのは俺一人で沢山だ』
もう無理だ、俺の体が消えかかっている。
『大丈夫だ、白龍から聞いた、お前への依頼達成の報酬だそうだ、お前を愛する人がお前に、その血をお前に捧げれば良い。』
俺に血を捧げる、誰が?
マリーが直ぐに落ちていた黄金の鉈を拾い、その鉈で右手の手の平を切る!
えっ、マリー!お前!!
マリーの血は俺の胸を伝い、俺の心臓の位置で吸収された。
俺の体の崩壊が止まり、
メリーがマリーから黄金の鉈を奪って直ぐに右手の手の平を切った!
メリー、お前も!
その血も胸を伝い、俺の心臓の位置で吸収され、
俺の体が薄く復活を始めた。
エリーがメリーから黄金の鉈を受け取り、迷う事無く、右手の手の平を切った。
エリー、有難う!
そして、その時、俺の体は完全に復活した。
『其は、お前の新しい心臓、『絆』だ、大切にしろよ。』
あぁ、大切にするさ。
『じゃ、俺も大切な人の元に行く、元気でな、レイ。』
連れないなぁ、相棒、最期くらい名前を教えろよ。
『俺は、『名も無き冒険者』、ただ其だけだ、じゃあな。』
そうか、
そうだな。
彼が去った後、此れも白龍様からの報酬なのだろうか、俺の全てのレベルは80に成った。
俺はゆっくりと立ち上がり、三人は俺にしがみついて沢山泣いた。
その後は、我が家の恒例で、俺はマリーさんに沢山、怒られた。
・・・・彼の手記は此で本当に終わりだ、この後の彼はD&DONと似たその世界で、マリーさん、メリーさんとエリーさんとでうまくやっていくだろう。
私から、捕捉することは、『ゲーム機PD4接続不可バグ事件』の事だ。
その日は、D&DONシーズン10・1のリーリス日でオンラインゲームとしては最高の盛り上がりを私は期待して、パソコンからゲームにログインした。
しかし、期待は裏切られ、ゲームにインするユーザは少なく、何が起こった?と不思議に思っていたら、SNSでゲーム機のユーザがログイン出来ないと大騒ぎしている事を知った。
その時の私は、流石D&DON、バグの演出も半端ないなぁ、と気楽に考えていた。
処が、突如、モニタの右上にポップアップが現れ、その内容は、
『緊急討伐要請 ディアマンドラアスを討伐せよ!』
えっ?
モニタはブラックアウトし、サーバ0000へ移動と表示された!
その後にモニタに表示されたラストニアは雪原の大地!
えっ!
神殿を襲う膨大なスケルトンにスケルトンサイクロプス、カーズドラゴン!
スパコンじゃ無ければ絶対に今の技術では不可能な光景が其処に展開していた!
私は直ぐに此が、我が友の救援依頼である事を理解した。
だが此クエストを依頼した時期が余りにも悪すぎた!
今日は運悪く十万を越すゲーム機のユーザがログイン出来ない日、
彼は其を知らない!
私は彼にその事を伝えなければと思い、彼を探した、
ミニマップに表示されている味方の青色の矢印に一番奥のラスボスと闘っている部隊を見つけた、
たぶん其が彼等だと直感した私は、その時の職が錬金術師だったので、アルケミストのカスタムスキル、レクス・カタパルタで彼等のいる場所へ向かう事にした。
そして、彼に会った私は、パソコンのキーボードで其事を伝えた。
NPCである彼は、私の話しに驚愕して暫くラスボスを見ていた、彼と一緒のエルフのNPCが『ガラナエキスの残りが後、4本です!』とモニタにテキストで表示された時、
彼はシーカにジョブをチェンジして、飛び出して行った!
残された三人のNPCは大騒ぎになり、ハンズオブゴッドが切れ、攻撃を受けそうだったので私は錬金術師のバリア、レギア・バリアルを張った。
しかし、シーカの彼はNPCとは言え、その業は卓越していて、其光景がSNSの動画で拡散され、ネットでは大反響を巻き起こし、
私のスマホにはSNSからの問い合わせが沢山来たが、此の状況では対応出来ず、
更に彼がたった一人でラスボスに向かっている姿を見て、何時しかあのラスボスを、あのNPCが倒せば此のゲームにログイン出来ると言う噂迄、SNSに流れ始めた。
三人のNPCは其々にジョブチェンジして、彼を援護し、彼の元へ行こうと必死であった。
私も何とか彼の元へと行こうと、仲間に呼び掛け、それに呼応して、どんどん合流して来る私のクランのメンバやフレンド達がラスボス迄の道を開け始め、私達は全員で彼の元へ向かった!
そして、彼がラスボスの左腕を切り落とし、最期にそのラスボスの首を切り落とした時、
SNSは歓喜で溢れ、十万を越すゲーム機のユーザが此の世界にログインして来た!
更に時間は三十分延長と成り、
大討伐が始まった。
そして、全ての力を使い果たした我が友は、ゆっくりと落下して来て、三人のNPCが彼を受け止めた。
その時の我が友の姿は、一目で手遅れである事が分かった。
彼はゆっくりと塵になり始めていた。
三人のNPCは泣いていた、プリーストは泣きながら回復魔法を掛けていたが、魔法は効果が無く、
やがて、彼が目を覚まし、彼と彼女達の会話がモニタにテキストで表示され、彼は自分がモンスターである事を謝っていた。
その頃には、彼が命を賭けて、此の世界を救うために私達に助けを求めた事が理解出来た。
そうだ、彼は自らの命を懸けたのだ!
自然と私達は、気高く、勇気のある我が友に敬意を払い、
一人のユーザが、彼に自身の武器を高く掲げその武器を捧げた時、その動作のスイッチが自身のモニタに表示されている事に気づいた。
その演出が何を意味するのかは分からない、
だが、私達が其をする事により彼の霊が救われるのなら、
私達は喜んで、その演出に参加するつもりであり、事実、全てのユーザが参加した。
正しく、彼への敬意は大輪の花となり、ラストニアの大平原に咲き誇った。
もし、モニタの先の世界に神がいるのなら、
その神が白骨の龍なのか、白き龍なのかは分からない、もしかして二つの龍が存在するのかも知れない。
我々が願う事は只一つ、
彼の命を助けて欲しい。
只其だけだった。
やがて、タイムアッブの時が来て、私達は世界に戻る時が来た時、
私達は一つの幻想を見た、神殿より白き一匹の龍が天に昇り、天よりもう一匹の龍が降臨して、お互いが愛するように絡み合う姿を、
私は思う、
一つの龍は彼のいる世界の龍、
もう一つの龍はもしかして、
私達の世界に存在する龍なのかも知れない。
二つの龍が、お互いが絡み合う世界。
ドラゴンズ&ドラゴンの世界の物語は、
こうして終った。