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ドラゴンズ&ドラゴン  作者: H氏
ハイドル霊廟怪異編
32/39

俺、借金を返すめどがたつ

 明日で俺達が『運営堂うんえいどう』と約束した『渦霊かれいの宝石』の六千個の納品も終わる。


 時刻は真夜中、目がえて眠れない俺は一人庭のデッキに座ってハイドル平原の夜空を見上げていた。


 夜空の美しくまたたく星々(ほしぼし)は、何時いつからかき起こった雨雲に消されようとしていた。


 冷たい風が北より吹き込み、火照ほてった俺の体と頭を絶えず冷やし続けていた。


「眠れないのですか?」


 物音で目を覚ましたマリーが俺に声を掛けてきた。


 俺はマリーを見ながら、「御免ごめん、起こしちゃった、ちょっと頭を冷やしたくてね。」


 マリーは俺の横に座って、「考え事ですか?」


 俺は頭をきながら、「まぁ、たいした事じゃないんだが、」


「エリーの事ですか?」


 マリーは結構、感が鋭いから俺が違うと嘘を言っても信じないだろう、だから俺はマリーに正直に話す事にした、


それもある、俺達にとってはエリーは絶体必要な仲間だ、本来は頭を下げて仲間になってくれと言わなければならない人だ、」


 マリーは優しく俺を見つめながら、「頭を下げたく無いんですか?」


 俺は首を振りながら、「違う、俺は彼女を仲間に出来るなら土下座も出来る、ただ・・俺は・・・自信が無いんだ。」


 マリーはちょっと驚いて、「自信ですか?」


「マリー、俺が君をビショップにしたのは、だだ君を助けたかったし、俺は君に一目惚ひとめぼれれしたからで、」


 俺の愛の告白にマリーは嬉しそうに微笑んだ。


「メリーをビショップにしたのは成り行きと彼女の勢いとまぁ、メリーが可愛いと思ったからで、メリーも俺のビショップをめたいと言わないから続いてる。」


 マリーは首をかしげて、「エリーがお嫌いなのですか?」と俺に聞いてきた。


「彼女は知的で可愛いくて、努力家だ、好きになっても嫌いになる分けが無い。」


それでは何故なぜ?」


 俺はマリーに、自分の苦しい胸の内をさらした、「マリー、最初に言った、俺は自分に自信が無いんだ、俺は一体、何者なんだ?確かにこのの世界じゃない別の世界の記憶はある、しかし、」


 マリーは何も語らず俺の手を握り締めた。


 俺もマリーの手を握り返した、「記憶は年をかさねるたびに薄くなり、それが真実だったのかどうか曖昧あいまいになる、近頃は自分の存在に自信が持てなくなって、俺は本当に何者なのか分からなくなって来た、もし俺の記憶が嘘っぱちで、実は俺は皆に相応ふさわしくない人間だったら!俺がいつわりの人間だと皆が知ったら!皆は俺を捨てるんじゃないか、また俺は捨てられるんじゃないか!それが俺には怖いんだ!」


 俺は一気に、心の内をマリーに吐き出した。


 真夜中の庭に静寂が訪れ、聞こえるは北風による木々(きぎ)の葉のこすれる音、草花くさばな波打なみうつ音。


 しばしの沈黙の後、マリーはゆっくりと俺に抱き付いてきた。


 マリーは俺の耳元みみもとささやく、「貴方あなたはレイ、少なくとも私達が出逢ったの四年間は、私達の愛する御主人様、貴方あなたは私達が知っているレイ・ハリー・ハウゼンその人であり、そして、それ以外の何者でも有りません。」


「マリー・・・」、俺はその後に続く言葉が出てこなかった。


 マリーは俺の目を真っ直ぐに見つめながら、「私は決して貴方あなた手離てばなさない、だから、貴方あなたも私達を見棄みすてないでくれ!」


 俺は思わずマリーをきつく抱き締めた、その時、俺の首筋に冷たい感触、


「えっ?」、俺は手をかざしながら夜空を見上げた。


 手の上に白い結晶、「雪?」


 ラストニアの気候は、沖縄、いやハワイに近い、気候は温暖で乾燥している、だから決して()()()()()()


「何故だ?」


 俺はラストニアに何かが起ころうとしている事に気づいた。


 俺は嫌な予感を胸にいだきながら、夜空を見あげ続けた。





 次の日、ラストニアの神殿は雪で白く化粧された状態になり、道や街道もうっすらと雪がつもった。


 馬車のわだちあとや人の歩くあとが出来ては降り続ける雪がそのあとを消していた。


 俺達は寒さ対策の為に厚手のマントを羽織はおって、『ハイドル霊廟(れいびょう)』に転移した。


『ハイドル霊廟(れいびょう)』のテントには、やはり黒いマントを羽織はおったトネリブァがいた。


「よぉ、トネ、アンタ一人(ひとり)かい?新人達は?」


 トネリブァは黒いアイマスク越しに笑った。


彼等かれら昨日きのうで終わりですよ、レイさん、我々(われわれ)も今日で引き上げるつもりです。」


「そうかそりゃ良かった、俺達も今日で終わりだ。」、と俺も嬉しそうに皮肉を込めて監視役のトネリブァに返答した。


 トネリブァは黙って懐から黒いカードを出して、「レイさん、カードを出してくれませんか。」


「?」、俺はトネリブァの言われるままにカードを出した


 彼は自分のカードを俺のカードに重ねた。


 その瞬間、百八十の『渦霊かれいの宝石』が俺のカードに振り込まれた。


「えっ?トネ、どうう事だ?」


 トネリブァは真面目に、「レイさん、勘違いしないでいただきたい、これはエリー嬢を貴方あなたが助けた、そのお礼として新人の冒険者達から私があずかった宝石です。」


 俺とエリーは顔を見合わせて、「そうう理由ならもらっておくよ、トネ。」と言ったが、まぁ、一応、『運営堂うんえいどう』からのほどこしだったとしても、俺はいただくつもりだ。


 俺は基本、もらえる物はもらう主義、営業時代は報償金も報奨旅行も全てもらった。


 俺達はトネリブァにお礼をった後、『ハイドル霊廟(れいびょう)』の一層に入る入り口に向かった。


 俺の後ろから着いて来るエリーが、さびしげに俺に声を掛ける、「あの、()()()()、私は今日で、」


 俺は振り向かないでエリーの話しをさえぎり、「エリー、俺としては、もしかったら君との契約を延長したい、勿論もちろん、追加料金無しでだ。」


 これが、今は俺に出来る精一杯せいいっぱいのお願い。


 メリーがエリーにき付いて、「エリー!かったね!レイが貴方あなたに仲間になって欲しいって!」


 エリーは涙声で、「メリー、私、」


 マリーも、うれしそうに、「エリー、これからもよろしくね。」


 俺は照れ隠しに、「さぁ、最期の一回、地下洞窟ダンジョンもぐって、の仕事を早く終わらせよう、そしたら暖かい所に転移して、うまものでも食おう。」


 マリーは、「はいっ!」


 メリーは、「いえぃ!」


 エリーは頭を下げながら、「宜しくお願いします。」


 こうして、俺達は最期の『ハイドル霊廟(れいびょう)』の地下に入っていった。




『ハイドル霊廟(れいびょう)』の最下層は大きく変貌していた。


 六本の巨大なコリント様式の円柱が支える広大な大広間の正面に出現した高さ6メータの巨大な両開き式の大門!


 その扉の模様はダンテの地獄篇その物!


 大広間の主、ワイトは存在せず、其処そこたたずむは三体の魔神!


 背の高さ四メータ、薄汚れボロボロになった黒く染まった頭巾フードの付いた外套マント羽織はおって右手には黒き三メータの古びた大剣を持ち、左手には古びた提灯ランタンを持つ、頭巾フードの中はだだ暗黒の中で光輝く二つのまなこ


 地獄の門番、『死の剣士(デスナイト)』!


 かってジャックと呼ばれた一人の剣士が、狂気きょうき狂喜きょうきに取り付かれた時、彼は二千もの(ひと)(びと)をその大剣で虐殺した!


 死してなおその罪はゆるされず、死の墓守はかもりの化物モンスターとして片手に提灯ランタンを持って墓所ぼしょ彷徨さまよっている、


 別名、『ジャックオブランタン』!!


 メリーが魔導籠手まどうこてめた右手と左手を打ち鳴らして、「大丈夫だよ!私達なられる!彼奴あいつら強く無い。」


「ダメだ!撤退する!!」、俺がさけんだその時、


 ズダーン!!!


 俺達の後ろの大広間の入り口が巨大な石の落とし戸でふさがれ、


「えっ!!」


 転移は!


 駄目だ!!


 使用出来ない!!!


 の時、俺は知った!俺達が地下洞窟ダンジョントラップまった事を!!


 マリーが俺に、「大丈夫です、御主人様は後ろに下がっていて下さい、私達だけで倒します!」


死の剣士(デスナイト)』のレベルは67、レベルが50代の俺にとっては強敵でも、レベルが70代のマリー達にとっては雑魚ざこだ。


 確かにマリーやメリーには簡単な相手だ、だが、『死の剣士(デスナイト)』は二重罠ダブルトラップ最初の仕掛(ファーストトリック)


 奴等やつらころされるために存在し、


 奴等やつらが死んだ瞬間、二番目の仕掛(セカンドトリック)が発動する!


 二番目の仕掛(セカンドトリック)それがあの地獄門だ!!!


 俺は散々(さんざん)の手のゲームをやったから分かる。


 三体の『死の剣士(デスナイト)』が手にした提灯ランタンを高くかかげた、


 俺が、「来るぞ!状態異常!!散開!!!」と叫んだその瞬間!!


 グワァァァァァァァ!!


 床が黒く輝き!


 ダァァァンンンン!!!


 カスタムスキル、『進撃錬成杭パイル・バインダ』でメリーが一気に真ん中の『死の剣士(デスナイト)』との間合いを詰めて錬金杭パイルを撃ち込む!!!


 バァコココココォォォオオンン!!!


 マリーが大剣DDDを大きく振りかざして、


 ダァーン!


 ジャンプする!!


 バァゴゴォオオオンンン!!


 戦士ウォリアのカスタムスキル、『飛龍突ひりゅうし』を発動させ大剣を左側の『死の剣士(デスナイト)』ごと大地に突き刺し大地をえぐる!


 バシュゥウウウウンンン!


 エリーはエレメントアーチャーのカスタムスキル『閃魔光せんまこう』を発動させた!


 スコォオオオオオンンン!!


閃魔光せんまこう』は聖属性の魔矢で、三方向に撃たれた魔矢が着弾地点に魔法球を展開し接触した魔法球が、


 ズキューン!ズキューン!ズキューン!


 右側の『死の剣士(デスナイト)』に付着して連続しながら奴のライフを奪い確実にダメージを入れていた!!


死の剣士(デスナイト)』達は一歩下がって、体勢を立て直した後一気に大剣を下からすくい上げながら体全体を乱舞らんぶし、


 ガキーン!!


 メリーは、その大剣を自身を黄金化するカスタムスキル、『黄金化身ゴルダ・アウルム』で受け、


 ガコーン!!


 マリーはその大剣を大剣で受け、


 エリーに襲いかかって来た『死の剣士(デスナイト)』は俺が自身のダガーで受け!


 バコーン!!


 俺は三メータは飛ばされたが『かまなおし』のスキルで斬撃ざんげきの反動をキャンセルする!


 俺のライフゲージは半分にけずられ、エリーがはなつ『いやし魔矢』が俺に着弾して、俺のライフがゆっくりと回復する。


 ヤバイ!やっぱり俺のレベルではコイツらには勝てない!


 『ハイドル霊廟(れいびょう)』の最下層、大広間は乱戦と化し、大剣と大剣が大剣と魔導籠手がぶつかり合う撃音が木霊こだまする戦場となった!!!


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