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ドラゴンズ&ドラゴン  作者: H氏
ハイドル霊廟怪異編
28/39

俺、白き伝説になる

 借金を背負った俺達は、借金の代わりに『ハイドル霊廟(れいびょう)』の化物モンスターから採集される、『渦霊かれいの宝石』を一日二百個、合計六千個を集める事になった。


渦霊かれいの宝石』は地下三層に渡る『ハイドル霊廟(れいびょう)』の化物モンスターを討伐するとまれ落とす(ドロップ)のだが、問題はその確率で、地下一層から三層迄、化物モンスター討伐とうばつしても二十五個前後しか採集出来ない。


 つまり、一日に二百個集めるには、一日八回『ハイドル霊廟(れいびょう)』の地下にもぐらなければならない。


 『ハイドル霊廟(れいびょう)』は、そんなに長い地下洞窟ダンジョンじゃない、それでも一層から三層(まで)だと普通で三時間はかかる。


 普通にやっていては九時間で三回『霊廟れいびょう』にもぐって一日が終わってしまい、採集出来る宝石の数も七十五個前後で二百個には全然足りない。


 俺達は『ハイドル霊廟(れいびょう)』を一時間に一回、高速に周回して化物モンスターを殺しまくり、『渦霊かれいの宝石』を集めなければならない。


 更に全ての化物モンスターが必ずしも『渦霊かれいの宝石』を何時いつも落とすわけではないから、他の冒険者を出し抜いて出来るだけ多くの化物モンスターを狩らねばならない。


 俺が狩った化物モンスター落とした(ドロップ)宝石は、俺の収納カードに保存される、マリーやメリーが狩った化物モンスター落とした(ドロップ)宝石も俺の収納カードに保存される。


 効率を考えると三人がバラバラで狩りをしたほうがい、しかしレベルが低いとは言え、『ハイドル霊廟(れいびょう)』は魔物が巣食すく地下洞窟ダンジョンだ。


 魔物はける、弱いと思った魔物も次に再出現リポップした時、同じレベルとは限らない、其処そこが現実とゲームの違いだ。


 安全を考えたら、三人一組の行動(スリーマンセル)はずせない、俺に取ってはメリーやマリーは、今や俺の命より大切な存在だからそれを失うなら、俺は借金なんか踏み倒す。


 今の俺は、そうう気持ちだ。


 とは言え、俺は借金を返す気持ちは有る、そして俺には他の冒険者とは違い九つのジョブを持っている。


 高速に走り回り、獲物を瞬時に狩る事の出来るジョブ、


 それは、『探求者シーカ』とうジョブだ!!


探求者シーカ』の武器はタガーと呼ばれる両手に持つ二本の全長10~30cm程度の諸刃の短剣とロープ、

 

 シーカはロープを使って宙空ちゅうくうを舞い、縦横無尽じゅうおうむじんけ回るそのさまは、まるで戦場に吹き飛ぶ疾風のようで、


 その技は手に携えたロープを自由自在に操り、巨大な化物モンスターの背後、頭上等、思いもよらぬ死角へと瞬時に潜り込む事が出来る。


 ジョブの特徴はロープによる位置取りと攻撃速度の速さそして空中でも二段ジャンプが可能なことだ。


 シーカの攻撃の特色は斬・打・炎属性・空中攻撃と多彩な攻撃スキルを持つ。


 またかまえキャンセルスキルを持ち、状況に応じて使い分ける事でどんな敵・相手にもそれなりに火力を発揮できるのがシーカの唯一ゆいつの特徴である。


 かまえキャンセルスキル、通称『構え直し(かまえなおし)』はあらゆる動作を強制キャンセルでき再使用間隔も短く、攻撃スキルの隙を減らしてタガーを相手に連打したり、被弾モーションをカットして体制を立て直すなど攻防あらゆる局面で活躍かつやくする。


 更に回避動作の基本技、『転身てんしん』で戦闘でも身軽に動けるだけでなく長距離移動においても全ジョブ断トツの移動速度を誇るため、あらゆる場面で移動時間を短縮できる強力なアドバンテージを持つのがシーカである。


 そして、今回、特に使用するスキルは『かまいたち』


 『かまいたち』はシーカの初期スキルで、敵を追従する猛ダッシュの斬りつけ攻撃を放ち、初撃が当たると連続で斬り返しを放つ高速移動攻撃技だ、勿論もちろん、スキルだから使用する事によりスタミナを消費する。


 今回の『ハイドル霊廟(れいびょう)』での『渦霊かれいの宝石』を一日二百個を収集する為に俺達はシーカのジョブを選択し、『かまいたち』、キャンセル『構え直し』、『かまいたち』、キャンセルの連続で高速移動、高速攻撃を繰り返す事にした。


 スキルはスタミナを消費し、スタミナが無くなれば俺達は動けなくなる、その為、俺達は大量のスタミナ回復薬、ガラナエキスを持って行く事にした。


 但し、効果の高い高級品のガラナエキスは高価だ、沢山は使えないのでスタミナの回復は、やはり自然に回復する事が重要でその場合、スタミナ消費が少ない、シーカの基本技『転身てんしん』が重要になる。


『ハイドル霊廟(れいびょう)』で魔物のいない区間はスキルの使用をおさえ『転身てんしん』で高速に転がりながら移動するのだ。


 しかし、俺は自慢じゃないが三半規管が弱い、目が回りやすく酔いやすい、だから今までシーカのジョブはあまり得意ではなかった。


 今回は、きらいだ、不得意だと我儘わがままを言ってられないので、メリーに言ってガラナエキスで作った酔い止めドロップをめながら、シーカの『転身てんしん』に挑戦する事にした。


 たぶん、俺、ゲロッピするよなぁ。


 いやだなぁ。




 そんなこんなで、次の日、俺達はシーカに転職して、朝、日の出と共に『ハイドル霊廟(れいびょう)』にある『拠点きょてんいしずえ』に転移した。


 其処そこで見た光景に俺達は愕然がくぜんとした、其処そこには『運営堂うんえいどう』が集めた百から二百の冒険者がたむろしていて、黒鎧くろよろいの『運営堂うんえいどう』スタッフが『ハイドル霊廟(れいびょう)』に入る順番等を仕切っていた。


 彼等かれらほとんどは若い冒険者の男女で、どの子達のレベルを見ても低く、たぶん冒険者の成り立てか初心者だろう、皆楽しく会話しながらまるでれからピクニックに行くのって感じだ。


「おはようございます、レイさん。」


運営堂うんえいどう』の黒鎧くろよろいのリーダ、トネリブァが俺達を見つけ、俺達に声をかけて来た。


「おぃ、一体何なんだ?の状況は、」


 俺は、トネリブァにの状況について聞いてみた、


 トネリブァはにがい顔をしながら、「保険ですよレイさん、私達はレイさんに期待しているんですが、レイさんの実力を見誤みあやまって万が一約束して頂いた宝石が集まらなかった場合、うちは神殿から莫大な違約金を取られますからね。」


 トネリブァは若い初心者の冒険者を見ながら、「まぁ、彼等かれらじゃ四人で潜って一層迄、一日、五十個いくかどうかですよ。」


 俺は呆れた、「初心者を無理矢理、地下洞窟ダンジョンに突っ込むって、お前らどんだけブラック企業なんだよ。」


 トネリブァは不思議そうに、「ブラックキギョウ?何ですかそれ?」


「俺の故郷ふるさとでのめ言葉。」


 トネリブァはちょっと嬉しそうに、「そうですか、有難うございます。」


ところで俺達にとっては、彼等かれらは邪魔なんだけど、その点は?」


 トネリブァは俺の顔を見ながら、「それも考慮こうりょして、地下洞窟ダンジョンの入場規制をしています、彼等かれら地下洞窟ダンジョンもぐるのは、レイさん達が出発してから十分後です。」


 一応は考えているんだ、


「それでも、一層は混んでるかも知れませんけど、レイさんの狩場は二から三層なんで問題無いですよね。」


 俺は諦めて、「無いことは無いけど、仕方無いんだろ。」


 トネリブァはニヤリと笑い、「助かります。」 と言った後、俺達から離れて行った。


 メリーが俺に催促さいそくする、「レイ!旦那様!早くもぐって、早く集めて、早く帰ろう。」


 マリーが俺の右腕にしがみついて引っ張る、「そうですよ、御主人様、早く終わらせましょう!」


 俺は微笑んで、「分かった、メリー、マリー、じゃ、もぐろうか。」


 こうして、俺達の『ハイドル霊廟(れいびょう)に走る白き稲妻いなづま』の伝説が始まった。





 と、格好良かっこよく言ったものの、現在の時間は夜の八時、俺達は青い顔色でトネリブァの前に立っていた、俺の顔色は青を通り越して、真っ白だった。


 トネリブァは嬉しそうに、「流石さすがですねぇ、二百十二個!約束の二百個を越えた十二個の宝石はどうします、うちで一個500(ゴールド)で買い取りますか?」


 マリーが疲れた、小さな声で、「買い取りで、」


 結局その日の俺達の収入は、十二個の宝石代、6000(ゴールド)だけだった。


 その日、俺達は休憩をはさんで、朝の七時から夜の八時迄、十三時間、合計十回、『ハイドル霊廟(れいびょう)』に潜った。


 メリーが作ってくれたガラナエキスのドロップの効果もむなしく、俺は『転身てんしん』を使い高速に転がり始めると、


 ぐに目が回って、気持ちが悪くなり、胃の中身が逆流して、最所は我慢していたんだけど、我慢出来なくなって、途中で『構え直し』でスキルをキャンセルして立ち止まり、


 ・・・俺はその場でゲロッピした。


 立ち止まりながらゲロッピをする俺に対して、最初は心配してやさしかったマリーやメリーも、十回を越えるゲロッピに対して効率の悪さに苛立いらだち、


 遂にメリーさんが切れて、「旦那様!止まらないで行こうよ!!」と有無言わさない眼光で俺をニラミ、


 俺は怖いメリーさんに負けて、吐きながら先に進む事にした。


 三層の狩りが終わり、逆に戻ると三層はまだ化物モンスター再出現リポップがして無いので、更に戻って二層に行ってもまだ再出現リポップ途中だったら、もっと戻って一層に行かなければならない。


 それでは効率が悪いので、俺達は三層の狩りが終わると一度、『ハイドル霊廟(れいびょう)』にある『拠点きょてんいしずえ』に転移し、戻って一層から再度、地下洞窟ダンジョンもぐる事にした。


拠点きょてんいしずえ』の前には『運営堂うんえいどう』が用意した仮設テントがあり、中で休憩か食事が出来るように椅子とテーブルが設置されていた。


 俺達は其処そこで十分間休憩するか、同じく『運営堂うんえいどう』が用意した仮設トイレを使うかした後、再び地下洞窟ダンジョンの一層に潜った。


 一層には若い男女の初心者冒険者が楽しくおしゃべりをしながら化物モンスターの狩りを楽しんでる。


 そして、俺達は『転身てんしん』で回転しながら高速移動すると同時に、俺はたまらず白き光を放ちながら彼等の横を通り過ぎ、


 俺達が通り過ぎたあとから阿鼻叫喚あびきょうかんの悲鳴や絶叫が『ハイドル霊廟(れいびょう)』に木霊こだまする!


「ギャアア!汚ねぇ!!」


「くせえええ!!」


「イヤアアアアアア!!」


 勿論もちろん、マリーさんもメリーさんも絶体、俺の後ろには行かない。


 俺は悪く無いんだ、俺は悪く無い、と自分に言い聞かせ、俺は白き光を放ちなから転がる。


 もぐる事、五回を越える頃には吐く物が無くなり胃液を吐き始め、七回を越えた時点では胃液も出なくなり、俺の顔は真っ白になった。



 もう色んな意味で出す物が何も無い俺達が帰ろうとした時、


 俺はトネリブァの横に山のように積まれていて赤く光輝く綺麗な『渦霊かれいの宝石』に気づき、


 俺は宝石を見ながら、


「すげえなぁ、その宝石、武器や防具の強化に使った後はどうするんだ、売るのか?」


 トネリブァは笑いなから、「まさか、レイさん、『渦霊かれいの宝石』は強化に使ったら石ころになるんですよ、知らなかったんですか?」


 石ころ?こんな綺麗な宝石が?


 「知らなかった、じゃ、『運営堂うんえいどう』は二万の石ころを倉庫に仕舞っとくのか?」


 トネリブァは頭を掻きながら、「レイさん、ほらてるところは、ハイドル平原中に何処どこでも有るじゃないですか、皆やってますよ。」


 なんだよ、違法投棄いほうとうきなの?まぁ、此処ここじゃ取り締まる奴いないし、


 そんなもんかと思いながら、俺達は帰路についた。


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