俺、指名依頼を受ける
そんなこんなで、全然稼げなかった俺達は『白龍神殿』の『冒険者組合』に戻って何か稼げる民間の依頼が無いか依頼ボードを二人で見ていると、『組合長』のアースボルトが一通の書類を持って俺達に声を掛けてきた、
アースボルトはハゲの丸坊主にガチムチの体格をした男で、彼は不断はカウンタの中で組合が発行する依頼の受付や相談等をしているナイスガイだ。
「相変わらず、稼げなかったのか、レイ」
余計なお世話だ、アースボルト!と心の中で呟き、彼も最初の一年位はレベルの上がらない俺に対して、一向に強く成らない俺を心配して色々なアドバイスをしてくれたが、
今では才能が無いと思っているのか、殆ど俺と口を聞く事は無かった。
「よぉ、アースボルト久しぶり。」と俺は気さくに声を掛けたが、
アースボルトは黙って俺を見た後、暫くマリーさんを見続け、
「ゴホッ、ゴホッ、」と咳をした後、
手に持っている書類を差し出し、
「よし決めた、此の組合に来た護衛依頼をお前達への指命依頼とする!」
俺は心の中でガッツポーズ!
高額な依頼は殆どが組合から単独指命された冒険者に依頼がいく、依頼された冒険者は依頼人と独占交渉権が貰えて、交渉によっては依頼料の嵩上げが可能な、冒険者にとっては最も美味しい仕事なのだ!
アースボルトは、「相手は異教徒の女性だ、此の書類を持って明日の正午に『仲間酒場』に行け、依頼人から声が掛かる筈だ、後は直接交渉しろ。」
俺はピーンと来た、今の時期異教徒と言えば!「依頼人の正体が分かったぞ!アースボルト!」
アースボルトは驚いて、「えっ!」
俺はニヤリと笑いながら、「依頼人の正体は、新大陸の族長の娘!セシルアさんだ!彼女の帰国の護衛!」
アースボルトは呆れながら、「お前は馬鹿か、何でそんな重大な依頼をお前のような万年中位の冒険者に頼む!」
アースボルト、酷い!万年中位の冒険者だなんて、まぁ本当だからなぁ、
アースボルトはため息を付きながら、「だいたい、彼女は一昨日高位の冒険者を護衛に帰国したぞ、」
「えぇ、セシルアさん、確か五日前にブリダ海岸に流れ着いたんだよねぇ、帰るの速くねぇ!」
アースボルトは首を振りながら、「彼女の今回の来日は本国で流行り病が流行し、その薬、『抗侵薬』をメルコダの錬金術師に作って貰う為に来日したんだぞ、薬が出来上がったら直ぐに帰るの当たりまえだ、」
「えぇ、じゃあブリタ海岸に流れ着いたと言うのは?」
「ちゃんと船で来て、船で帰った、そんなの誰かが話を面白くするために流した噂だ!」
俺、がっかり、セシルアちゃんと知り合いになって、来年は新大陸をゆっくり楽しむ予定だったのに、
「まぁ、今のレイの実力じゃ新大陸は無理だが、後、三年後位なら可能かな、其と高位の冒険者はもう新大陸フェルダームにはいないぞ。」
俺はアースボルトの話に驚いた!
「えぇ!新大陸に居ないって!じゃ彼等は何処へ?」
アースボルトは何だ知らないのかって顔をして、
「隣の大陸で戦争が起きて、其所の王家が多額の報償を出して高位の冒険者を引き抜いた、多分来年の素材の流行は隣大陸産だな、彼処は新大陸フェルダームより実力がいるし、素材も貴重だからなぁ」
えぇ、またハードルが上がるんですか!俺はガッカリした、そんな俺の様子を見たアースボルトは俺達に依頼書を渡して、
「まぁ、人は其其だから、レイお前はお前のやり方で強くなればいい、じゃあな。」
アースボルト、お前って良い奴なんだなぁ。
そんな、アースボルトと俺のやり取りを隣で見て聞いていたマリーさんは、
「やりましたねぇ、御主人様初めての指命依頼ですよ、此で収入が増えれば久しぶりに美味しい物が食べれますねぇ。」
と、ロマンより食い気、
三年も一緒にいると遠慮は無くなるのよねぇ。
翌日、俺達は正午に『仲間酒場』に行くと直ぐに依頼人が分かった、
確かに場違いな格好をしていた、白いゆったりとしたジャケットにゆったりとしたロングスカート、白いマント、ウェブのかかった黒い髪にパッチリとした目立ち、
あの格好、ありゃ、メルコダの錬金術師だ!
俺達は彼女の前に立ち、依頼書を掲げて、
「俺は、『冒険者組合』から指命された冒険者のレイ ハリー ハウゼンだ、あんたが此の依頼書の依頼かい。」と尋ね、
彼女は俺の頭の先から下迄、暫く観察した後マリーさんを見て、
「まぁ、容姿は我慢出来る範囲として、そちらの方があなたの『ビショップ』、組合は条件にあった人を推薦してくれたようねぇ、分かったは商談を進めましょう。」
俺は、「?」
「まぁ、立ってないで座ったら、何か飲む?」
俺達は薦められるままに座って、『レスタニアワイン』を注目した。
彼女は、「その様子じゃ組合から何も聞いて無いようね、交渉はお互いでする、そうゆう事ね、」と言い、
俺は、「条件のある指命依頼は、基本は受ける受けないは指命された冒険者が決める事で、『組合』は不介入だ、」と俺は然り気無く話題を今回の条件が何かを聞き出すように誘導した、
なんせ、俺もとはセールスマン、それもトップのね、冒険者は落ちこぼれだけど、
「そうね、私はメリエンヌ ゴールドウエィ、呼び名はメリーで良いわ、見ての通り錬金術師よ、だから白龍教の信者じゃ無いわ、依頼は条件付き私の護衛、報酬は金のインゴット100本、前金で50本、依頼達成後に50本。」
俺は驚いた、「随分破格だな、まさかゴールドウエィって!」
「良く聞かれるけど、ゴールドウエィ王とは無関係よ反逆者じゃないわ、一応、貴族だから遠い親戚かもねぇ。」
ゴールドウエィ王はレスタニアでは有名な反逆者だ、錬金術で作った竜ゴールドランに乗って白龍神殿の上空から黄金をバラマキ、神殿の経済を崩壊させようとした極悪人、是非、今俺達のもとに来て欲しい。
俺は直接聞いた、「でっ、条件とは、」
彼女は簡単に、「私を貴方の『ビショップ』にする事よ。」
俺とマリーさんは同時に、「えっ!」
メリーさんは続ける、「今回の報酬にはその経費も含まれているわ、私は錬金術師、つまり異教徒だから冒険者には成れない、でも冒険者の力は、白龍の霊力の加護は私達にとって魅力的なのよねぇ、一時的でいいから冒険者に成りたい分け、それでこの依頼を『冒険者組合』にだしたのよ、もう一つの条件は女性の『ビショップ』を持っている人、私も女だから一応不安なのよ、でも自分の『ビショップ』に優しい人なら安心でしょ。」
マリーさんは空かさず、「御主人は優しいんですよ!それに巧いし!」
ちょっとマリーさん!何を言ってるんですか!照れちゃうでしょう!
「ふうーん、御主人様って呼んでんだ。」
俺は真面目に、「でっ、俺達は何処に君を連れて行けばいいんだ?」
メリーは、両腕をテーブルに付き両手を組んで顎を伸せ、「メルコダの人工ダンジョンの最奥にある古い研究室、欲しい書類があるの、其処に出て来るのは中の下の人工魔物よ、貴方達なら楽勝のはず。」
「ダメだ、俺達はメルコダに行った事が無いから行けない。」と俺は彼女に問題点を提議し、
彼女は腰のポケットから黄金のカードを取りだして、「大丈夫よ、貴方達冒険者のカードは初級冒険者の保護のため必ず礎の登録が必要だけど、私達、錬金術師のカードは全ての礎が登録されているし、それに貴方達も運べるわ。」
マリーさんは喜んで、「やりましょう!御主人様!是非、引き受けましょう!」
俺は考えながら、「『ビショップ』登録には80万Gが掛かる、俺達にはそんな手持ちが無い、前金で80本、達成後に20本」と条件を出し、
「良いはそれで、但し此方は急いでいるの、明日『ビショップの郷』で私が貴方の『ビショップ』に成ったら直ぐに研究室に行くわよ良いわね!」
「・・・分かった。」
彼女は一言、「信じてるわよ!」
そうして、俺とメリーはカードを重ね、
俺のカードに80本の『金のインゴット』が振り込まれ、
俺のカードが光輝き、此の依頼の情報が記載された。
俺とマリーさんは正式に此の護衛依頼を引き受けた。