俺、泣く
平原は、夕日で赤く染まり、
俺の体には、数百の斧が、全身は、血で赤く染め、立つことかなわず、大杖にすがり付きながら、意識を失なうことに、必至で抵抗していた、
生命力のバーは、レッドゾーンとなり、
マリーは、泣いていた、俺に近づこうと、俺に魔矢を打とうと、俺の名を叫びながら!
俺の前に、皇帝ドルゾックが立ち、言った、
『ゴミガァァ!!!』
「五秒、」 俺は呟き、数えた、
詠唱開始、
皇帝ドルゾックが手を上げ、
「四秒、」 俺の回りに、魔方陣が浮かび、
目は、表示されるスペルを高速で追い、
皇帝ドルゾックが手を振り下ろし、
最後のゴブリンの首が飛ぶ、
「三秒、」 俺の体は浮かび、
より早く、より超速に、
平原に、最後の結界の割れる大音響が、
木霊し、
「二秒、」 俺の体が、赤く輝き、
より正確に、より確実に、
皇帝ドルゾックが、大剣を片手に持ち、
その大剣を、天にかざし、
「一秒、」 天が割れ、
あと、少し、
皇帝ドルゾックが、俺に、
大剣を振り下ろす、
その瞬間、
「ゼロ、」
詠唱完了
天は、数多の隕石で埋め尽くされ、
大地は、破壊と業火で被い尽くされた。
幾多の、オークが空に舞い、チリとなり!
業煙の中を、いまだ健在の皇帝は両腕に大剣を持ち、吼える、
『ヴゥアカァガァァァァァァ!!!!』
ガキィィィィィィィィィィンンン!!!
平原に響き渡るシステム音!!!
『対価承認!』
『1001サーバー移動』
『エクストリームミッション開始』
二十分のタイムカウントが開始され、
平原は、蒼白に発光し、三万を超す、D&Dのユーザに埋め尽くされた!!!
そうきたか、白龍様よ、
『ヴゥアカァナァァァァァ!!!!』
皇帝ドルゾックが、叫ぶ!!!
俺は、ゆっくりと、立ち上がり、
「エクストリームミッション!」
大声で叫ぶ!
「緊急要請!!オークの軍団を殲滅せよ!!!」
小さな声で呟く、
「報酬は、俺の、感謝の気持ち、」
D&DONのユーザは、ゲーマーだ、この情況で、自分が何をしなければいけないか、分からない者は、いない!
そして、彼等は、すぐに、行動を起こした!!
数百人のトッププレーヤーは、何千のオークを蹴散らし、!!!
平原に巨大隕石が、爆雷が、業火が荒れ狂い、
何百人のソーサラーが、大魔法で何万のオークを壊滅させた!!!
大巨竜ベヘモットが、巨人サイクロプスがチリと消え、
傷つき、今にも、死にそうな俺に、数百の『癒し魔矢』が打たれ、
多くのプリーストが、俺に、『ヒーリングスポット』を掛けては、走り去り、
俺の、命のバーは、ゆっくりと、本当にゆっくりと回復していった。
たぶん、俺は、その時、泣いていたと思う。
ボロボロのレオが、血だらけ泥だらけのガルダリンが、泣き顔でくしゃくしゃのマリーが、俺に駆け寄って来た。
マリーは、俺にしがみついて、大声で泣いた。
レオが、イケメン顔で、俺に聞いた。
「レイ、これが、・・君の命を賭けた・・対価の結果なんだな、」
「・・・そうかもな。」
俺が、白龍に望んだ願いは、ただ、助けて欲しい、それだけだった。
一人でも多く、助けて欲しい、そう願った。
「レイ、彼等は一体、・・何者なんだ?」
「・・・俺の、ダチだ」
そうだ、彼等は、D&DONと言う一つのゲームを通じて、分かりあえるフレンド、友達であり、
この世界が期待する、『真なる覚者』とは、彼等のことかもしれない。
二十分が過ぎ、彼等は、徐々に薄くなり、やがて消え、
薄闇に包まれたハイドル平原の水平線に、日は落ちようとしていた。
平原に、立つ魔物は、ただ一体、皇帝ドルゾック、
奴の、生命のバーは、ほとんど消えかかっていた。
レオが、剣に手を掛けようとした時、俺は、彼を制止し、自ら前に出た。
そうだ、俺は、死にかけた強敵に止めを刺すことが、大好きな、生粋の卑怯者だ、
『ヌゥワァゼダァァァァァァァァ!!!!!』
皇帝ドルゾックが、天に叫ぶ!
さあ、何故かな、俺にもわからん、
決着を付ける、スキルはただ一つ、『一閃突き』俺にはそれしか無い!
俺は大地を蹴り、ドルゾックは、大剣を右斜めに振り上げ、
交差した瞬間!
大地に日は沈み、皇帝はチリとなった。
・・・・彼の手記で、今、公表できるのは、ここまで、この後の彼は、D&DONと似たその世界で、マリーさんとうまくやっているようであり、彼の冒険はまだまだ続く、
私から、捕捉することは、『1001番サーバーのバグ事件』のことだろう。
当時、D&DONは10周年のリアルタイムイベントで盛り上がり、千人が同時接続できる60台のサーバーの半数が、混雑状態だった。
その時、私も、一ユーザとして、この祭りを楽しんでいたが、
祭りが、抽選会で最高潮に達した時、それは起こった。
「カキーン」とシステム音が鳴り、
バーナーがポップアップした、
「エクストリームミッション」
画面は、ブラックアウトして、
「1001番サーバー移動」と表示された、
この時点では、まだ、誰しもが運営の隠しイベントだと思っていた。
画面が切り替えわった時、私は、愕然とした。
広大な平原を、埋め尽くすオークの軍団、遠くに、血だらけのNPC、その前を、巨大なオーク、彼の生命バーは、レッドゾーンだった。
彼が叫ぶ声が、スピーカーから聞こえた、
「緊急要請!!オークの軍団を殲滅せよ!!!」と、
イベントの開始だ、画面にはタイムカウンタが表示され、
オークの討伐が始まった。
そして、膨大な生命力をもった、巨大オークだけが残って、タイムアップを向かえたことを覚えている。
もちろん、報酬は何もなく、
この事件に対して、運営は、知らないの一点張りで、一部のユーザと揉めたが、
結局、ネットの大多数の意見は、運営が、密かに、用意している、MMO、マッシブリー・マルチプレイヤー・オンラインにバグって、つながった。
そう言うことで終わった。