俺、特訓する、したくないけど
精霊馬?
D&Dには牛はいるけど馬はいない、基本乗り物はない、精霊馬はこの世界のオリジナルなのか?
翌朝、俺とマリーは、精霊馬でブリダ海岸に向かった。
精霊馬は、半透明な馬だった。
ゲームに設定が無いから半透明なのか?
分からん!
一応、馬なので、マリーさんが前で馬を操作して、マリーさんを抱くように、後を俺、うん実にいい!
ブリダ海岸に滞在できるのは、一泊二日、三日目にはオークの大軍団が来る!
二日の夜には、神殿に戻らなければならない、時間との戦いだ!!
武器は全て、☆四つ、神殿の錬金術師が徹夜で頑張ったそうだ。
目的は二つ、一つは俺達が、この強化された武器に早く慣れること、二つめは、スペルの詠唱を少しでも速くすること。
ブリダ海岸のロートス村は、規模ではトロ村と同じくらいだが、ここでも礎は破壊されていた、現在、錬金術師が修復に取り掛かっていたが、作業はあまり進んでいないようだった。
村民は、ほとんどが漁師で、神殿に対するオークとの争いの影響か、ここ数日は、漁に出ず、避難民の対応に追われていた。
俺達は、正午にロートス村に到着すると、エリアマスターのアネールに、細かいことは説明せず、ただ魔術の練習をする事だけを告げた。
すぐに、俺は海に向かい、『メテオフォール』の詠唱を開始した。
詠唱に、勘で十分ほどかかった後、詠唱が終了すると天から、五発の隕石が海に落下し、響き渡る轟音とともに海面を赤く染めた。
これでは駄目だ!
神殿騎士団がオークを食い止めるられる時間が、一時間、一回にオークを十体討伐するとして、六回発動したら六十体、
千体には、ほど遠い!!
詠唱時間は一分、一回に十六体以上が条件だ、威力、速さともに足りない!!!
俺は、何度も何度も繰り返し、『メテオフォール』を放った。
自然と目の前に薄く表示されるスペルを、何度も、目でなぞり、より早く、より早く、いつしか、放った回数を数える事すら諦めて、俺は、『メテオフォール』を放ち続けた。
詠唱が終了するたびに、目の前が反転する感覚と浮遊感が、俺を苦しめた、数を重ねるたびにそれはひどくなり、ついに、俺は立っていられなくなって、膝をつき、海岸に吐いた、何度も吐いた。
そんな俺にたいして、マリーさんはエレメントアーチャーの、体力を回復するスキル、『奮わせ魔矢』を放ち続けた。
最初は、ほとんど効果が無かった『奮わせ魔矢』だが、マリーさんのスキルのセンスが俺より、たぶん優れているのだろう、少しずつ気分が回復する、そうゆう気がするようになってきた。
その合間に、マリーさんは『癒し魔矢』『治し魔矢』のスキルの練習をしていた、マリーさんは器用な人だ。
ブリダ海岸の日は落ち、夜となった。
本来は、村の窓明かりしか無いブリダ海岸だが、今夜にかぎり、天は、数多の隕石で光り輝き、海は、業火で被いつくされ、轟き渡る轟音は、止む事を知らず。
俺は、倒れては立ち上がり、詠唱を続けて、また倒れる事を繰り返し、
何時しか海岸は、朝を迎えていた、朝日は後の山影から射し込み、
汗と涙で霞む目には、朝の光りが反射する海面と蒼い海は綺麗だった。
あぁぁぁぁ、海で遊びてぇぇぇ!マリーさんワンピースの水着似合うだろうなぁぁ、
俺は、ビキニより、ワンピース派だ、スクールじゃないぞ、 あっ、巫女ちゃんも誘って、「ご主人様?」
はっ、いかん、疲れと眠気で意識が飛んでた、
「ご主人様、大丈夫ですか、少しお休みになられたら、」
マリーさんが、俺を心配している。
詠唱時間は、三分を切り、スキル酔いも、少し楽になってきた。
「駄目だ、マリーさん、もう少しで目標の詠唱時間に到達する気がする!続ける!」
マリーさんは、何も言わず、ただ、俺を見つめ続けていた。
結局、夜になっても、『メテオフォール』の詠唱時間は、二分は切ったが一分を切ることは出来なかった。
隕石も、五発から七発に増えたが、それ以上は増えず、ロートス村での訓練は、時間切れを迎えた。
俺とマリーさんは、夜通し精霊馬を走らせて、神殿に戻った。
神殿では、ジョセッペ司祭長をはじめ、皆が俺達の帰りを待っていた。
俺達は、話もそこそこに、神殿の客室のベットに飛び込み、そのまま意識を手放した。
朝、目が覚めると、隣にマリーさんが寝ていた、マリーさんの汗の混じった匂いが、いい香りだったので、くんかくんかしていたら、マリーさんが目を覚まして怒られた。
客室には、生命力と体力が回復する風呂が備わっていたので、マリーさんに一緒に入ろうと誘ったら、真っ赤な顔をして、両腕をクロスして拒否された、残念(>_<)
朝飯に、神殿が用意した『キノコソテー』とパンを食べた後、神殿勇者レオの元に向かった。
彼等は、商店街の奥にある神殿騎士団の戦略立案室にいた。
そこには、畳六畳程のテーブルがあり、そのテーブルの上には、ハイドル平原のミニチュアが作られていた。
その中で、デフォルメされたミニチュアのゴブリンを先頭に、ミニチュアのオークが北東のグリットン砦から死者の小窟まで、まるで絨毯のように埋めつくされていて、その絨毯は徐々に拡大しているのがわかった。
「これは?」俺は、ジョセッペじいさんに聞いた。
「知らんか?メルコダの錬金術師が作った、『遠見のボード』じゃ、ラストニア全土が写し出される、更に、騎士団やお主ら、冒険者等、白龍様の加護がある場合、もっと良く見ることが出来るぞ」
「もっと良く見える?」
「見たい所を意識するのじゃ」
俺は、緑の絨毯を意識して見た、すると、半透明の映像が目の前に表示され、そこには、さまざまなオークが行進している姿が写し出されていた。
「おっ!」
俺は、驚き、関心した、本当にメルコダの技術半端ねぇ!って、ちょっとまて、じじい、これで、俺達を監視していたんじゃ!
よかったぁ、ロートス村の海岸でマリーさんと××しなくて、まぁ、マリーさん、まださせてくれないけどねぇ。
「だが、司祭長、奴らは、これからどうする気でしょう?神殿には白龍様の十枚の結界がある、籠城戦ですか?」
レオは、不思議そうに司祭長に尋ねた。
「わからん!十万の軍団で何とかなると思っているのか?そうでないのか?」
騎士団長はじめ、お偉方で議論したが結論は出ず、もちろん、俺や、巫女ちゃんも聞かれたが、二人共白龍様から詳しく聞いていないので、答えることは出来なかった。
なんせ、あの禅問答の白龍様だよ、質問するにも対価を要求するし、無理じゃねぇ!
結局、オークは神殿にたいして籠城戦を取る意見に落ち着いた。
日が傾きかけた頃には、ハイドル平原の北の大橋を、十万のオークは渡り終えて、ハイドル平原は緑の絨毯で被いつくされた。