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ドラゴンズ&ドラゴン  作者: H氏
始まりの大地編
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俺、大地に立つ

ある一人の住宅販売セールスマンが死んだ、仮に彼をY氏と呼ぼう。


彼は、伝説的なトップセールスマンで、マネージャーになっても、20年トップを走り続けてきた奴だ。


享年40才後半の彼は、何を思い生きていたのだろうか。家庭も人生の全てを犠牲にしてトップであり続ける辛さは、私にはわからなかった。


私と、彼との関係は、職場における営業と設計であり、共通の趣味がゲームであった


当時、二人がはまっていたのが通称D&D、ドラゴンアンドドラゴンオンラインだった。


このゲームは、特に変わったゲームで、オープンワールドゲームであり、オンラインRPGであり、アクションゲームという、全ての要素が詰まっているが、基本無料ゲームのため、全てが消化不慮になってしまった、とても残念なゲームであった。

またバグが多い事でも有名だった。


そのため、名作か駄作かのネットでの炎上はあとをたたず、彼とは、良くその事で話し合った。


彼は、私に言った。 

あの、滅びゆく世界観が好きだと、彼は、仕事で徹夜してもこのゲームをしていると、私に言った。


あそこではトップに立っていない自分がいる、そして、そこで散歩するのが好きだと。


確かに、彼は、当時のカンストレベル100を目指すことなく、レベル40前後を楽しんでいた。


そんな彼の一周忌で、私は、彼の別れた奥さんから、ブリントされたコピー用紙の束を渡された。


彼の遺品の中から出てきたそうで、私宛てだと彼女は言った。


最初のページに、私宛に記載があった。 中を呼んだ私は、この内容を公表するかどうか迷った。


当時、DONどおんで話題となった『1001番サーバーのバグ事件』の謎も、ここには記載があった。


そして、彼の手記には、全てのD&Dユーザーに対して感謝の謝辞の記載があった。 


これは、彼の遺言なのだろうか、それとも真実なのだろうか、その判断は、この手記を呼んだ方々にゆだねる事に、私は決心をした。



以下は、彼の手記となる。




よう、H氏(彼は、私の事をそう呼ぶ)、君がこの手記を呼んでいる事を俺は期待している。


たぶん、そちらでの俺は、死んだんだろうな。


俺は、気が付いたら、この大地にパンツ一丁で立っていた、そうだ、君もよく知っている、ここだよ、ラストニアの大地だ、ここは、まさしく、あのDONどおんの最初の国のラストニアだ。


風が気持ちいい、草があのCGのようになびいている、虫の音も聞こえる、鳥が一斉に飛び立った、俺は、感動でふるえたね。


パンツ一丁なのに、寒くはない、たぶん、レベルのせいだ、この世界にはDONどおんと同じレベルがある、うっすらと、俺のステータスが目の前に表示されて、見える。


俺の現在のレベルは40だが、これが多いのか、少ないのかは俺にはわからない。

そして、この時はまだ、自分が、ゲームをしている感覚だったような気がする。


持ち物はパンツ1丁だが、他には、手の中に、2,000G 100G硬貨が20枚握っていた。


たぶん、死んだときに財布にいれていた2万円だったりして、まさかね、それに、価値も何故か分かる気がした。


いつまでも、立っているわけにもいかないので、回りをみまわすと、遠くに神殿が見えた。


なぜ神殿かって、決まっているじゃないか、始まりは白龍神殿、俺のシックスセンスがそう言ってる、だから、絶対間違いない、あれは神殿だ!


たぶん、太陽の角度から考えて、まだ朝方だから、夜になる前にあそこに行こう、俺はそう考えながら、神殿の方向に歩き始めた。


もちろん、石畳の街道を歩いていくほうが安全だから、俺は、ちょっと小走りぎみに、急いで街道を探した。


もしここが、ラストニアなら魔物が必ずいる、遭遇したら怖いし、ヤバイ、そう思って、俺は一生懸命走った。


結構このゲームをやりこんだから、ちょっと縮尺が違うだけで、地形は間違いなくラストニアだ、それで、街道をすぐ見つけることが出来た。


結局、神殿にたどり着くまでには、3時間位かかったと思う、太陽も頭の上にあったから、たぶん昼頃だろう。


近づくと、さすがにゲームと違い、巡礼者と見られる人々と、すれ違うようになってきた、彼等は、パンツ一丁の俺を見ても別段気にする訳でもなかった。


大門の前には、衛兵もいず、ネット小説の定番の言い訳を一生懸命考えていた俺は、拍子抜けしたね、ほら、記憶喪失とか、盗賊に会ったとか。


もちろん、俺もネット小説ぐらいは読んでるよ。


俺は、他の巡礼者といっしょに、大門をくぐり、その時少し肌に、ビリビリする感じがしたが、たぶん、これがゲームの設定にある白龍神殿の結界に違いない。


この結界があるから、魔物や盗賊は、入ることが出来ない、だから、門番も衛兵もいない、俺はそう思った。


中に入った俺は、その景色がほとんどゲームと同じ事に、感動したもんだ。


ただ、規模は違う、正面に見える龍の礎は同じ大きさだが、礎のある円形の広場は三倍も大きく感じた。


人も千人以上はいるようだし、店のテントも広場を囲むぐらいあった。


大門を入って、龍の礎のある広場の右側の階段を下に降りると、やはり宿場街があり、これもゲームといっしょだ。


宿場街もゲームより大きい、たくさんの宿場がある。


人通りも多い、手前には、ひときわ大きな建物があり、たぶん、あれが白龍神殿にある冒険者組合の建物だ。


組合の出入口である、両開きの大きな扉は営業しているようで、開いていた。

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