第2話 邪神の誘惑
3回目~、投稿なれてきました。
いつの間にか寝てしまっていたようだ。
気がつくと、私の目の前には子うさぎを抱きかかえた小さな女の子、
輝夜と同じくらいの歳かな?がいた。
黒いお目々はくりくりしていて、やわらかそうな黒い髪が腰くらいまで伸びている。
服は黒を基調にし、赤いラインをアクセントにした
ひらひらの多いゴシック調なドレスを着ており、
頭につけている赤い大きなリボンが可愛らしい。
ほっぺもぷにぷにしていそうでつまみたくなってくる。
…?あれ、この子どこかであったことがあるような?
妙な既視感が私の中に芽生える。
でも、こんな可愛い子に会っていたら忘れることは無いと思う。
だから、きっと初対面なんだろう。
そんな女の子が私に声をかけてきた。
「こんにちは、ボク、邪神です。ことしで7歳になりました。
邪神になって一ヶ月目なのです。よろしくおねがいします。」
そう言って、女の子はぺこりとお辞儀をする。
「この子は、ボクのともだちのうさたんです。
よろしくおねがいされてあげてくださいなのです。」
「うさ!」
邪神と名乗った女の子は、私の前に両手でうさぎさんを突き出してきた。
うさぎさんは、私に挨拶をするように
右手…右前足?をあげて「うさ!」と言ってくる。
うさぎの鳴き声って、うさ、だったっけ…?
「私は茜坂光姫だよ、えっと、邪神様?」
「邪神は職業なのです。えんどおぶわーるどが名前なのです、
気軽に『えんちゃん』と呼んでくださいなのです。」
邪神って職業なんだ、7歳で仕事に就いてるってえらいなあ。
「うさうさ」
「うさたんも、気軽にうさたんと呼んでほしいそうなのです」
訳せるんだ。うさたんがこくこくとえんちゃんの言葉に頷いている。
「ところで、みつきおねえちゃんは、何かボクにおねがいごとがあるはずなのです」
「うさ!」
お願い事…?
「えっと、もしかして寝る前に思っていた滅んでしまえ、こんな世界ってこと」
「違うのです」
一蹴された。
「そんなどうでもいいことなんて、みつきおねえちゃんのねがいごとじゃないのです」
「世界が滅びるのってどうでもいいんだ…」
私の願い事って何だろう、といってもひとつしかない
「もしかして、元の世界に帰りたい、とか?」
「それなのです!」
「うさ!」
合っていたらしい。
「いまならボクのお手伝いをしてくれるなら、特別に元の世界に帰してあげるのです」
「…えっと、うん」
えんちゃんが嘘をついているようには思えないけど、そんなことができるとも思えない。
「むむむ、
どうやらボクのことをうたがっているようなのです、とてもしんがいなのです」
そんなつもりじゃないんだけど。
「しかたがないのです、ボクの力をみせてあげるのです、てりゃー」
気がつくと、私はよく見慣れたバイト先のスーパーから自宅までの帰り道にいた。
今までのことは夢だったのかな?
そんなことを思っていた。
「うさ!」
うさたんが私の肩に乗っていた。夢じゃなかった。
『1日だけ元の世界に戻してあげるのです、
今のうちに挨拶してしばらく帰れないと伝えておくのです』
えんちゃんの声がどこからか聞こえてくる。
『帰れない理由は、とても割りのいいバイト先が見つかったけど
泊り込みだとでも言っておくといいのですよ』
「私としてはそのまま帰して欲しいかなあ」
『ボクのお願いを聞いてくれるなら、成功報酬はそうですね、
ご家族の方の学費ということでどうなのですか?』
「悠里と、輝夜の学費…?」
悠里と輝夜には好きな学校に行かせてあげたい。
『塾や参考書の代金、その他もろもろ含めて、成功報酬で5000万円でどうですか?』
「えんちゃんに、そんなお金あるの!?」
『こう見えてもボクは邪神なのです、お金なんて簡単に作れるのです、
前金で1000万、とりあえずうさたんに100万円を持たせておいたのです』
「うさ!」
お金が作れるって、贋金じゃないよね…?
うさたんがどこからともなくバッグを取り出すと、
中からそこそこ厚い封筒を取り出し私に差し出してくる。
ところで、そのバッグは空間の穴からでてきたような…
中を確かめると、諭吉さんがいっぱいいた。
『信用してもらえたですか?さすがに1000万円を現金で渡すのはあぶないので、
残りはあとで銀行に振り込んであげるのです。
それからですね、その他に成功報酬として、お母さんの体を治してあげるのです。』
「え?お母さんの体…治せるの…?」
お母さんはもともと体が弱かったらしいが、輝夜の出産が難産で、
そのとき命に別状は無かったが体を壊してしまった。
歩くのもつらいようで、輝夜の育児をあまり自分の手で行えないのが悲しそうだった。
なので、その分は私と悠里が可愛がることになった。
そして二人のシスコンが誕生したのだ。
『とーぜんなのです、ボクに治せないものなどないのです。
ところで、どうして泣いているのですか?』
そっか、お母さんの体、治せるんだ…
私はえんちゃんの力のことはもう疑っていない、
不思議な力を持っているんだ。
えんちゃんが治せるというなら治せるんだろう。
お母さんの体が治せると聞いて、私は涙を流していた。
『…気がかわったのです。お母さんの体は前払いで治してあげるのです。
ボクに感謝するがいいのです。うさたん、万能薬を出してあげるのですよ。』
「うさうさうさ~」
どこかの未来型猫型ロボットのような口調でうさたんがバッグの中から、
液体の入った瓶を取り出し私に渡してくる。
「これを、お母さんに飲んでもらえばいいの?」
「うさうさ」
うさたんがこくこくと頷く。
『万能薬は、5000万円よりも高い魔法のおくすりなのです。
すぐきくので効果はすぐにたしかめれるのです。』
5000万円より高い!?え、ちょっとまって、
この薬そんなに高価なの?でも魔法のお薬ってそれ位しそうだよね。
ま、まずい薬を持っている手が震えてきた。
『なので、それを使ったらボクのお願いは断れないのです、
それがどんなお願いであってもなのです。』
5000万円以上のお薬使って、お願い事を聞かないとかありえないよね
というより、断ったら、5000万円を支払うことになるわけで、無理。
「うん、お母さんが元気になったら何でも聞くよ、
さっきの世界を滅ぼしてきてもいいよ」
『そんなぶっそうなことはかんがえていないのです…』
なのです!
邪神様のひらがなうちが途中で面倒になりました・・・
5000万円って妥当な金額なんだろうか。