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デブ、跳ぶ

特になし

くだらない事象が重なりあうことで不可思議な現象がおき、異空間への道が開けるという。話を飛ばすが、この僕も、そういった事情かどうかは知らないが、いつのまにか深い森の中に立っている。唐突に異世界への道がなどと突拍子のない話をしたが、ここが地球ではないという判断は容易だ。なぜなら、空をイルカ(のような形の動物)が泳ぐように飛び、水中から鳥(のような形の動物)が顔を出していて、僕や僕の今までの環境から考える常識の範疇を越えている世界が広がっているからだ


――もちろん動揺している。だがそれ以上に感動している。ラノベで読んだあんなヒロインやこんなヒロインが僕のことを待っていると思うと、脂肪が震える。僕の手には先程まで食べていたポテチのりしお味。貪らずにはいられない。これから僕の素晴らしき冒険ロマン譚が始まるのだ!



――どおおおおおんッ!!


後ろでなにかが爆発したような音。振り返ばそこには――


「いてて…」


やけにひょろひょろで、たよりなさそうで、青白く、――いたって普通の青年だ。だが、あきらかに僕とこれからかかわり合いにあいそうな人間である。しかし、しかしだ。こういう異世界に来たら最初に出会うのは男ではなく美少女。私はつるぺったんに興味はないがせめて女であってほしかった。とはいえ、僕にはこの青年へのコンタクト以外に選択肢がない。


「だだだどだ……」


最近家族とすらちゃんと喋っていなかったから、うまく舌が回らない。青年は…


「――?…あはは、大丈夫ですよ。」


こちらの言わんとしていることを理解し、爽やかに答えてくれた。いい人だ。この爽やかな青年との出会いで僕の異世界ライフが大きく動き出すのだろう――


「――う、うわあああ! イルカが飛んでる!鳥が泳いでる!…こ、ここは地球じゃないんですか!?」


――え、お前も?



「――貴様ら、そこで何をしている!」


森の奥から声が聞こえる。あと馬の鳴き声。ぱからぱからという蹄の音。奥から現れたのは、精悍な顔つきに深紅の長髪を携えた、グラマラスな女性だった――このときばかりは私も心のなかで、この姫騎士との対面を喜んだのだが、その喜びもつかの間だった。


「うわあ、すごい格好ですねぇ…」


素人が。というかなんで二人同時に同じ異世界に来ているんだ。色々違うんじゃあないのか。主人公は僕だぞ。


「フン、浮浪者か。奇っ怪な格好をしているが――おい、お前名は?」


凜とした声だ。言われた方は自然と背筋が伸びる。先程はどもってしまったが今回は失敗しない。


「ふ、僕の名はデイb」「貴様ではない、そちらの青年だ。」


え?


「ぼ、僕ですか?ヒロノブです…」


姫騎士は口角をあげた。ふつくしい。


「よしヒロノブ、来い。私の部下にしてやる。」


姫騎士はヒロノブと名乗ったひょろひょろの青年の手を掴み自分の後ろにのせれば、颯爽と去っていった。

――このときばかりは僕も怒りと嫉妬にうち震えた。僕は思った。この姫騎士が所属する王国には絶対に助力しないと。



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