わりとどうでもいい事情
わりと5-1
それから、俺は皐月を背負いアパートに戻った。布団をしき、横たえた。
そんな中桜花は皐月の部屋をあちこち物色している。
「今さらだけどさあ……地球って恵まれてるよねえ……」
一応、相槌を打つか……怒らせると怖いし。
「いや、俺には何とも。そうかもしれないけど……」
「……」
桜花はそれには答えず、皐月の前でしゃがみ込む俺の隣に座る。
というか、皐月はこんなんで良くなるのか? 病院連れて行った方がいいんじゃないのか?
俺の表情を見て察したらしく、桜花が顔を近付けて来る。
「……何であたしがこいつを見逃したと思う?」
何でって……。
「お、俺に……同情して?」
他に浮かばん。溜息をつき、再び視線を向ける。
「バカ言ってんじゃない。一つはあんたが邪魔したからよ、でもこれは別にいいのよ? 破っても。人一人変死したくらいで、地球人は騒がないでしょ?」
「こ、怖い事言うな……じゃあ、何でだよ……?」
「……あんたが昔食べた、飴玉が問題」
「は?」
あ、飴玉? 真面目な顔してまたそんなお菓子の事……何か事情があるのかもしれないなあ。
「そ。皐月から貰ったあれ」
「はい!?」
皐月からって……そうか、あの女の子が……皐月だったのか。ん? てことは……俺は男皐月より先に、女皐月に会ってたっとことかよ。
「……気付いてなかったの?」
「……」
「まあいいや、あれがさ……あたしらの星ではちょっとした物なのよ。食べた人間がバッテリー庫になるかもしれないほどの力がある」
うーん、ひょっとして変な物食わされたって事か?にしても……。
「今更かもしれんが……」
「ん?」
「その……バッテリーって何だ? 俺らの感覚では機械を動かす電気みたいなイメージなんだけど」
「うーん……何て言えばいいんだろ? 例えばさ、地球では生活するために必要なものは資源からつくるでしょ?」
「そうだな」
「あたしらには、その資源がない。だから昔から、必要なものは個人やみんなのバッテリーって……あたしらが呼ぶ力によって精製してきた。何か進化の過程で出来るようになったんだって」
「凄いんだな、お前ら」
「そうでもないよ? バッテリー量は個人差があるし、一般的な人は自分の必要なものの一割も作れない。バッテリー精製は圧倒的に効率が悪いのよ」
……何というか、大変な星だな。俺なんか生きていけなさそう。
「だからさ、少しでも特化して精製率を上げるために分業化が進んだ。そしたら精製品や資質の差で格差が生まれる。争いになる。と……まあ、こんな感じ?」
「で、桜花や皐月が地球に来たのって……」
「あたしと皐月は対立する二つのコミュニティーに属している。元々は同じ環境の同じ学校で育つんだけど、何か分けられる。あたしがいるのが「ヴィクトリア都」で皐月がいるのが「エリザベス都」。争い争い尽くして、やっぱりよその星から資源を分けてもらうしかないってなった」
「……で、地球に」
「でもやっぱり足並みが揃わなかった。エリザベスはあたしらにも地球人にもバレないように、皐月を潜り込ませてたみたいだし? 以前別の星に目をつけてた時も、こいつら「観光観光」って住み着いてたし……まあ、そこはハズレだったから良かったけど。つまりセコいのよ。だから、それ以来ずっと戦争中」
「でも、皐月が飴玉くれたって事は……それより先に地球に来てたって事だろ?」
「ああ、あれね。確か大学の卒論書く時にさ、皐月と二人合作にしたのよ。あたしらは地球がアタリだって思ったからね、四歳の時」
「四歳で卒論!?」
ありえん……。
「あたしらにとって年齢や経験ってあんまり意味無くてね、早くからバッテリー量の多かったあたしや皐月みたいなパターンは六つくらいから大人と同じ扱いになる」
「……」
「で、何の話してたっけ? そうそう、あたしが十三? 十四? くらいのときにヴィクトリアが皐月がいない事に気付いてさ……」
てことは、皐月が来てから三年くらいか……。
「あたしが皐月は飴玉持ってたよーって言ったら……大問題になって大目玉食らって、地球に飛ばされ……現在に至るってわけ」
「また飴玉か……」
「これがさー、凄い代物なわけよ。普通の人はさー、デッカい家電とか何ヘクタールの野菜とか……何人も集まって必需品つくるの。飴玉なんて、誰も作らない」
「そう言われれば……」
「皐月母、もう亡くなってるんだけどね、病気で。その人のバッテリーがヤバくて、一人で城作れるレベル?」
「……いちいちぶっ飛んでるなあ」
「その人が形見として城バッテリー……まあ、病気で弱ってたから城はないかもしれないけど……を凝縮に凝縮して作ったのが、皐月が持ってた、あんたが昔食べた飴玉なの」
「……」
俺は……何て物を……。
「凄いよ? ヴィクオクで一般人百万人分のバッテリーの値打ちがある」
それは……凄いな……てか資源なくて困ってんのにネットなんて作っていいのかよ……。
「以上かな。つまりあたしの任務は皐月の始末と飴玉、残ってれば回収、食べられてた場合……食べた奴の生け捕り。だからあんたを殺してまで皐月を殺さない。オーケー?」
「うん……て、待て!? 生け捕りにされた後、俺はどうなる!?」
「は? そりゃ……ヴィクトリアの為に体内のバッテリーを活用するに決まってるでしょ? ま、いいとこ一生女性幹部の性奴隷?」
おい……レーティング的にそれはマズいだろ。
「ふぁあああ……もう一時じゃん……あたし帰るわ」
「ま、待て!? お前が帰ったら、皐月はどうなる!?」
こんなに血塗れで、いつ死んじまってもおかしくないだろ!
「そんなの、あんたが朝まで手でも握ってりゃ体内のバッテリーが治してくれるでしょ? 明日の朝にはケロっとしてるわよ……」
「何だ……」
俺に何とか出来るのか……!? だ っ た ら も っ と 早 く 言 え Y O !
「あっ、それと……」
「……まだ何か?」
「……あんまりバッテリー無駄遣いするんじゃないわよ? あたしだって、あんたのバッテリー……あてにしてるんだから」
……知らん。
駄文で申し訳ないです。