わりとどうでもいい再会
すみません。遅くなりまして……。
一応ここから十一話です。
わりと11-1
「はあああぁ……」
俺は過去の愚行を悔いていた。
「ひゃっはあああっ! ヤバい、楽しみ過ぎるぅ!」
……羞恥心というもののない馬鹿は気楽でいいな。
四限後のHR、事件は起きた。今日の残り二時間分を使う課外授業の抽選結果の発表という……。
それは遡る事……三学期始め頃。当時、皐月はまだ男だった。
「さあああっ! 選びやがれ貴様等っ!」
香港の叫び声が響き渡る中、俺たちは一枚のプリントを受け取る。
「課外授業の案内、ねえ……」
三学期の終わり頃、午後二限分を使い課外授業をやるらしい。
ラインナップは……。
ーボーリング講座。
ー大学見学。
ー映画鑑賞。
ーアナウンサー体験。
……etc。
……ボーリングだな。そう思った時、香港がまた叫ぶ。
「がはは! お前らのことだ、ボーリングばっか選ぶ気だろ! 定員があるからな、第二希望まで書くんだぞ!」
……マジかよ。ボーリング以外でマシなやつ、ねえ。映画は……どうせつまんねーのだし、大学は論外……。
そんな中、一際異彩を放っているものがあった。
ー現役看護師による性教育。
……こんなの、選ぶやついな……いや、まさかな。
「どう考えても、性教育一択!」
……まさかだった。
「……そうか、がんばってこい」
「ま!? 付き合わない気でいらっしゃる!?」
「当たり前だろ、馬鹿たれ」
隣で元もうんうん頷いてる。そんな中、皐月は特に反応がない。
「皐月はどうすんの?」
「俺? 恭二と一緒なら何でもいいぜ」
そう言いながら、後ろから抱きついてくる。またお前はそんな……お陰で俺ら女子から何て言われてるか……。
ま、いいけどな。今に始まったことじゃないし。
「恭二は何がいいんだ?」
と、皐月。
「そんなの、ボーリングに決まってる」
授業中に遊べるんだろ? それこそ一択だろ?
「そか。じゃあ、俺もそれだ」
……まあ、いいや。これで元も来れば三対一だ、行きたきゃ一人で勉強して来い。
しかし……圧倒的不利になった三世は不敵な笑みを浮かべている。
「甘あああいっ! お前、香港の話聞いてなかったのかよ!? ボーリングなんて超激戦区だ、抽選漏れで大学行かされるに決まってるっ!」
「いや、しかし……それでハナから諦めるのは……」
何というか、負けた気がしないか?
「皐月!」
「ん? どした、三世」
俺にもたれ掛かったまま、皐月は答えた。
「俺ら四人、ボーリング希望になんてしてみろ……バラバラにされるのがオチだ。つまり……」
「……つまり?」
ヤバい、皐月が騙されかけている。
「恭二と、離れ離れになる」
「!?」
この世の終わりみたいな顔してやがる……全く、皐月は。
「皐月よ、そんなに深刻にだな……」
「恭二!」
今度は俺の真正面から、真っ直ぐ視線を向ける。
「な、何だ?」
「俺、わかった。競争率の高いのは危険だ」
……ヤバい、このままじゃ。
「いやいや、競争率の低い穴場っぽいの探そうぜ? 何かあるだろ?」
流石、ブレーン元。もうお前だけが頼り。
「うるせえ! 現役ナース様が手取り足取り性について御指南してくれる! これ以上の掘り出し物があるのか!? 答えろ! 答えてみ……」
「……そうだな、もう好きにしろ……」
どこをどう解釈すればそうなるんだよ……てか、今日日ナースとか言うなって……。
「よし! 元は性教育な!? 皐月、恭二は任せた!」
「おう!」
互いにガッツポーズを送る。
……何か、俺もどうでも良くなって来た……。
「恭二!」
「は、はい……」
じいいいいーっと、俺の目を見つめる皐月。
「俺と……」
「お、おう……」
「性教育を……」
「……」
「……学ぼう」
「……わかったよ」
悲報……俺氏、陥落。
わりと11-2
俺は三世の野望に屈し、今こうして絶望しているわけだ。何がそんなに堪えるか……それは。
「……やらしー。まだマシなグループだと思ってたのに……」
「三世はともかく……元と恭二もそういう人だったんだ……」
……香港の「次は性教育! 三世、元、恭二、皐月! ボーリングの誘惑に負けず、国の行く末を案じ正しい性とは何か学びに行くこいつ等に拍手う!!」……なんて配慮の欠片もない発表の後、俺たちの評価は地に落ちた。女子たちの蔑みに晒されている。
「きっと皐月ちゃんが女の子になったからよ。そそのかす為選んだんだわ」
……そこ、時間軸おかしくね?
「じゃああかわしいっ! ナースの手ほどきを受けた俺様が貴様らにみっちり指南してやるわああ! 楽しみに待ってなっ!」
……ホント、馬鹿が羨ましいよ。侮蔑に耐えられなくなった元は早々に行方を晦ました。可哀そうに……きっと何処かで泣いてるよ。まあ、皐月に対する説明責任のある俺には……それさえ許されないわけだが。
そして、責任を果たすことさえ……ままならない。
何故かって? 皐月が女子三人にバリケードされて、近付くことすら出来ないからさ……。
「皐月ちゃん! 悪いことは言わない、考え直しな」
「え……でも……」
「性教育が終わった後、いやらしさMAXの中に皐月ちゃん一人だよ? きっと「よからぬ事を始めようじゃないか……」って!」
「……はあ」
ははは……もう殺せよ……。
ボーリングに受かった連中が羨望の中向うのを尻目に、俺たち汚いものはダンゴムシのようにひっそりと出発した。
わりと11-3
俺たちダンゴムシが連行されたのは、近所の公民館だった。
人数は二十人前後……いかにもという顔ぶれだ。
「ナ……ナースぅ!」
「ぶ……ぶひぃ!」
「現役ナースのエッチなご指導とか……狙い過ぎだろjk……」
……俺、明日からどうなるんだ……このレベルと同括りされるとか……最後の奴なんかタイトルすら変わってるし……。
「メアド聞くぜええっ!」
これは三世。流石だぜ……このメンツに一切引けをとらない。
「楽しみだね、恭二」
「そうか……!?」
ヤバい……皐月に話しかけられた瞬間、凄まじい寒気が……。
「「「「……氏ねばいいのに……」」」」
……ガーデンも朝飯前だよ……てか、何気に三世までハモってんじゃねえっての。
「はあ……」
溜息をついた瞬間、歓喜。
「「「「……キタアアアーっ! び、美人ぶひいいいーっ……!」」」」
……三世、もうこの世界で生きてけよ……。
何処のどなたか存じませんが……お気の毒に……!?
……え?
えええーっ!?
「恭二、あの人!」
「看護師さあああーんっ!」
「あらっ!?」
「「「「……爆ぜろおおおーっ!……」」」」




