揺り籠を探す手に 03
頬を掠める柔らかな風圧。
刈り取ったばかりの草の香が鼻腔を擽った。
沈んでいた意識が再び急浮し、私は夢現と目を覚ます。
ボンヤリとした淡い光は明け方か?
それとも、夕刻なのだろか……。
差し込む淡い金茶色の光が柔らかい事に気付き。
私は……なんとなく、今が夕方だと判断してみる。
頭を動かし、天井から視線を移し壁際を見つめてみた。
不思議な事に身体には倦怠感に痛みも全く感じない。
体が嘘のように自由に動くのだ。
額に乗せられている湿った布を手に取る。
そうだ、わたしは通学途中に……?
ゆっくりと身体を起こす。
---そう、私は事故に遭った。
湿った布を握る手を凝視して言葉を飲む。
布を握る手、それは部活で負った怪我の痕も無い小さな手。
もう片方の手を見つめる。
手の甲と手の平、左手首に有るはずの火傷。
その跡が無い事実に驚き。
熱湯を浴び、母を心配させたあの爛れた傷跡が無い?!
この小さな手は誰の手だ……。
私の意志で動き、布を握り締めるこの手の持ち主は…。
ダレなのだ?
---オカシイ。
起こした身体を自らが抱きしめる。
この身体は違う、違いすぎる。
だって、私は高校生で17年を経た身体なはず。
幻覚とか夢とか……?
否定と拒絶で頭を振った。
自分の身長とは到底思えない。
此処まで小さいと “小柄” いや、これでは“幼児”のモノ。
まごう事無き子供の体、造形である。
普通に考えれば小学生程の背格好?
薄桃色の着物に身を包んだ子供の身体だ。
自らの意思で動く、この体は間違いなく私。
なぜ、何が。
---これは夢?
そうか、私は夢を見ているのか……。