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華胥の国に遊ぶ  作者: 柴舟
序章
3/51

揺り籠を探す手に 03

 頬を掠める柔らかな風圧。

刈り取ったばかりの草の香が鼻腔を擽った。

沈んでいた意識が再び急浮し、私は夢現と目を覚ます。

 ボンヤリとした淡い光は明け方か?

それとも、夕刻なのだろか……。

差し込む淡い金茶色の光が柔らかい事に気付き。

私は……なんとなく、今が夕方だと判断してみる。

頭を動かし、天井から視線を移し壁際を見つめてみた。

不思議な事に身体には倦怠感に痛みも全く感じない。

体が嘘のように自由に動くのだ。

額に乗せられている湿った布を手に取る。

そうだ、わたしは通学途中に……?

ゆっくりと身体を起こす。


---そう、私は事故に遭った。


 湿った布を握る手を凝視して言葉を飲む。

布を握る手、それは部活で負った怪我の痕も無い小さな手。

もう片方の手を見つめる。

手の甲と手の平、左手首に有るはずの火傷。

その跡が無い事実に驚き。

熱湯を浴び、母を心配させたあの爛れた傷跡が無い?!

この小さな手は誰の手だ……。

私の意志で動き、布を握り締めるこの手の持ち主は…。

ダレなのだ?


 ---オカシイ。


 起こした身体を自らが抱きしめる。

この身体は違う、違いすぎる。

だって、私は高校生で17年を経た身体なはず。

幻覚とか夢とか……?

否定と拒絶で頭を振った。

自分の身長とは到底思えない。

此処まで小さいと “小柄” いや、これでは“幼児”のモノ。

まごう事無き子供の体、造形である。

普通に考えれば小学生程の背格好?

薄桃色の着物に身を包んだ子供の身体だ。

自らの意思で動く、この体は間違いなく私。

なぜ、何が。


 ---これは夢?

そうか、私は夢を見ているのか……。

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