揺り籠を探す手に 02
纏わり付く不快感に自由を失った体。
落下する失速感に恐怖を覚え、私は悲鳴を上げた。
狭い通路を圧し抜ける圧迫感。
暗い筒の中で、引き寄せられた方角から灯りが漏れ出ていた。
射し込む光へ向けて苦しさから逃れようと私は足掻く。
低下し沈んでいた意識を急浮上させ必死となって。
けれども、酷く体は疲労して思う様に動かない。
体が思う様に動かず、手も足も意思に従わない拘束感。
束縛された…と、私は苛立つ。
頭部を捕まれる吸引力。
抵抗すら無駄に感じる、強い力に逆らえず私は絶叫した。
圧迫感と息苦しさ、抵抗の意思すら果て涙が流れ出た。
自由を失った体に苛立ち、伝わらない意思に言葉に嫌悪して。
「… …雛姫さ…」
耳に拾ったのは母の声だ。
慌て心配して病院へと駆けつけ、私の枕辺に居るのだろう。
私は無事だと、安心してと伝えたいのだが儘ならない。
微かに開いた目蓋から母の姿を探そうとした。
けれども、視界が霞んで見えない。
「…雛さ……ますか」
あ、聞こえています。
何故か返事が出来ないのです。
もどかしく、瞬きをして意思を伝えてみようか?
しかし、目蓋を上げるのも億劫なのだ無理である。
ふと胸元をトントンを優しく叩かれ、痺れを覚える手を握ってもらった。
幼い頃に寝付くまで母によくやってもらった行為。
思い出して、強張った肢体が少し楽になる。
ひんやりと冷たい手の平が、額に寄せられた。
母の手に違いないと無意識に安堵する。
「雛姫…ま……」
また優しく胸元を叩かれた。
安心した四肢に睡魔が訪れ加速し始める。
霞む意識が拾ったのは、遠くから廊下を足早に歩く音。
一人か二人が忙しなく歩む気配。
沈んでいく意識の中で、私はボンヤリと思った。