一、
このお話を読んで、気分を害される方がおられたら、申し訳ありません。しかし、作者は、世の中には、色々な愛の形があっていいと思います。そして、それを批判する権利は誰にもありません。これを読んで、同じ気持ちを抱いてくれる人が1人でも増えれば嬉しいなあと思います。これは、さまざまな愛の形を応援する物語です。
「ねえねえ、聞いた?篠原雪美って、レズらしいで!。」
「え、まじで!?」
「らしいで!それで、バスケ部の浅野と付き合ってんねんて。」
「うそ、浅野と?」
「浅野ってそっちの趣味やっけ?」
「さあ・・・。でも、ちょっと男っぽいとこあるもんな。」
「確かに!けど、キモいよな。女同士で何すんの、って感じでさ〜〜。」
別に誰がどうしようと関係ない。ただ、面倒なことに関わりたくないだけ。
朝っぱらからこんな話をされる、篠原って子と浅野が少し気の毒な気もするけれど、私には全然関係ないこと。
私は、ぼんやりと教室の窓から外を眺めた。
3階の窓から見える景色は、11月ってこともあって、すっかり色褪せてきている。
もうすぐ冬がやってくる。
「なあなあ、ちょっとからかったれへん?」
「おっ、いいねえ〜〜。」
女の嫌がらせはつまらへん。彼女たちは、黒板に浅野と篠原の相合傘を大きく書いた。
傘の上のハートは赤のチョークで塗りつぶす。
一体、こんなことをして何が楽しいのか。
「あ!来た!」
ガラガラとドアが開いた途端、蜘蛛の子を散らしたようにそれぞれの席に着く。
入ってきたのは、篠原雪美、張本人やった。
「おはよう。」
しんと教室が静まりかえる。
「ねえ、浅野とどこまでいったの?」
突然口を開いたのは、サヤカやった。
クスクスとあちらこちらからの笑い声。
「どっちから告ったの?」
雪美は答えへんかった。
私はずっと窓の外をぼんやり眺めたままで、雪美の表情を見た訳ではないけれど、きっとひどく赤面しているに違いない。いや、怒っているのか。
でも、敢えて見ようとも思わへん。
私には関係ないし、関わりたくもない。
どうでもいい。
人が泣こうが笑おうが、何をしようが無関係。
人を理解しようとも、理解したいとも思わへん。
このときの私は、人を愛すること、人に愛されることを忘れていた。




