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中編

この作品は霊式兵器シリーズ 霊式戦闘機迦楼羅と世界観を共有していますので、そちらを読んでいると更に理解が早いと思います。


3.廻る


 敵は結果に満足せず第二次攻撃を企画中との現地諜報員からの連絡に大本営は青ざめる

 緊急で高高度迎撃機の研究が進められるが、爆撃で工場は破壊され、瓦礫と化した道を荷車に部品を乗せて人力で運ぶような状況。

 これでは到底次の迎撃に間に合わない。

 だが間に合わせるしかない、それが例え、元より帰還を望まぬ機体であっても


 整備班と、総本山から緊急招集された真言の僧侶たちは、格納庫で七日七晩、不眠不休の護摩業と改修を執り行った。

 炎の中に投じられるのは人々の祈りと、そして坂本の「未来」そのもの。


護摩の炎が格納庫を照らす中、ナミの瞳には、組み上がっていく『震電』が巨大な棺桶に見えていた。

彼女の感応能力は、機体に注ぎ込まれる霊素が坂本の「幼少期の記憶」や「老後の安らぎ」を燃料として食い潰していく様を、鮮烈なヴィジョンとして映し出す。


「……ごめんなさい、坂本さん。私の調整が完璧であればあるほど、あなたは遠くへ行ってしまう」


彼女がこの狂気の開発を止めなかったのは、それが彼に対する唯一の「慈悲」だと信じたからだ。


(もう、あんな醜い地獄(呪い)の中であの人を戦わせたくない。次に飛ぶのなら、せめて……すべての怨念を浄化する、圧倒的な光の中で飛ばせてあげたい)


(不完全な機体で呪いに食い殺されるくらいなら、自分の全霊を込めたこの翼で、神仏の領域まで一気に駆け抜けさせてあげたい)


整備服の下、彼女の肌には、機体と同期した際に転写された曼荼羅の紋様が、火傷のような痣となって浮かび上がっていた。


彼女は自らの魂を「彼を成仏させる部品」として捧げた。


完成したのは、黄金の曼荼羅を機体に宿した

『震電廻』


これまでの機体「戒」とは別の、比べ物にならない業を背負わされた機体。


この機体の動力は『寿命』そのもの


そして出撃の時


「坂本さん……私……坂本さんを……私……」


 その指先は千切れるほどに数珠を握り締めていた。


 坂本の耳には、もう何も聞こえないが、ナミの気持ちは伝わる。


 坂本はナミの手のひらに指で一文字ずつ、丁寧に惜しむように文字を書く


「最高に綺麗な、朝焼けを見せてやるよ」

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