第8話 エルドレイ攻略!
こうして、ベイルは新たにディンという豪傑を仲間に加えていた。
そして、それを束ねるベイルやアリアスは義勇軍ながらも正規軍からも一目置かれる存在へと昇華を果たしていた。
それからというもの戦いは局地戦が続きながらも、遂に一つの関門へと侵入を果たしていた。
時はヴァルタニア歴326年、ベイルたちが出兵してすでに3ヶ月が過ぎていた。
「とうとうエルドレイ城についたな」
フリオスもまた一息ついていた。そして、フリオスたちはエルドレイ城目前森林部で仮説テントを建て、作戦会議をしていた。
その中に、ベイルやアリアスの姿もあった。
「ついたとは言っても、あそこはエルドレイ城。難攻不落かつ、敵将はあのプロペティですぞ」
部隊の大将の一人がそう答えると、全員が意気消沈していた。
プロペティと言えば、先の大戦である「セントニグス戦争」で数々の武勲を挙げている英雄であった。
しかし、戦後は金遣いの消耗が激しく家を追い出されていた。
そして、今は流浪の衆の大将であった。
「プロペティか…私も共に戦い背中を預けあった仲だ。それを思うと、残念でならん」
フリオスは過去の回想に入り浸りつつも、その末路を悲しく思っていた。
その姿を見ながらも、アリアスは何とも言えぬ思いを抱いていた。
この戦いにおいて、このプロペティを討ち取ることが出来れば、武勲を立てれば出世できる…
その考えが出てきた途端、アリアスは思わず自分自身を疑っていた。
兄夫婦への弔いが原動力のはずだったのに関わらず、今はこの乱世で生き抜いていきたいという願望が徐々に心を蝕んでいった。
アリアスはふと、席に座るベイルの方を眺めていた。
こいつはそう思っているのだろうか?
この乱世で戦いたいという思いは少なからず芽生え始めているのだろうか?
そんなことを考えながらベイルの形のいい横顔を眺めながらそう考えていた。
しかし、その視線に気がつくはずもなくベイルやアリアスはその会議中、一言も言葉を交わさなかった。
「で、どうだったんだよ?」
自身たちの仮説テントに戻るや否や、ディンが鎌を磨きながらそう質問していた。
「生憎だが、特に進展なしだな」
アリアスが代わりに答えていた。
「なんでそんなにくよくよしてんだって話だ。さっさと、攻め込んじまおうぜ?」
ディンはそう答えていた。
「お前、単純だぜ?」
アリアスがそう挑発していた。
「なんだと、この」
ディンも立ち上がっていた。
「やめとけよ、疲れるだけだ」
ベイルはそう手短に鋭く言っていた。
その言葉に水を刺されたのか、両者行き場のない気持ちを悟って黙り込んでしまっていた。
「…だが、ディンが言っていたことも否めない。俺はエルドレイを落としたい」
アリアスがそう呟いていた。
その言葉に対して、ベイルもうなづいていた。
「確かに、フリオス将軍たちには縁がある。明日にでも、出撃を要請するか」
ベイルもまたそう答えていた。
翌日になると、ベイルたちはまた会議へと足を運んでいた。
朝の挨拶が終わると、ベイルはフリオスに対して出撃する旨を明かしていた。
「其方がやってくれるか?」
フリオスは期待を含む声でそう答えていた。
しかし、あたりの評価は芳しくなかった。
まだ、20代前半の若者の経験のなさに危惧を覚えていたためであった。
しかし、フリオスはそんな声は気にせずに快く出撃を許可してくれていた。
「何か、策はあるのか?」
ディンが出撃準備をしながらそう質問していた。
「あるにはあるが、いかんせんそれにばってきする人物を探さなくてはな」
ベイルはそう答えていた。
すると、出撃中の間に1人の青年がベイルを訪ねていた。
年はベイルやアリアス、ディンよりも一回り上に思えた。
「あなたは?」
ベイルは誰かと尋ねていた。
「私はパーシヴァル•オーキスです。貴公の部隊に入りたく思いまして」
すると、辺りが騒ぎ始めていた。
パーシヴァル•オーキス。セントニグス戦争における、最大の英雄の1人であるにも関わらず、戦後は姿を消していた。
「これは、パーシヴァル殿」
ベイルは思わず、頭を下げていた。
その姿に対して、パーシヴァルは苦笑を浮かべていた。
「若年期戦いばかりで過ごしたので、戦いに疲れていたのです。ですが、あなたたちのような若い者を見ていると、味方になりたいと思いまして」
パーシヴァルはそう答えていた。
「それに、もう人が死ぬのは懲り懲りですからね」
その言葉にパーシヴァルの本性を垣間見たような気がしていた。
こうして、ベイル、アリアス、ディンそしてパーシヴァルは、エルドレイ攻略を開始しようとしていた。
セントニグス戦争
ヴァルタニア歴308年から315年までの7年間かけて行われた戦い。隣国である強国フェイロスとの領地セントニグス分割問題がこじれた為に始まった。戦いは極めて凄惨かつ激戦の連続であり、互いに名だたる武将たちを次々と失うほどであった。戦いにはヴァルタニアが勝ったものの、こちら側の戦力の消耗が激しく赤日隊の台頭を許すほどに経済力を落としていた。




